ふたりの碧い想い

□第2章 西の洞窟
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夜、アスランはアスハ邸をこっそり抜け出した。
21時少し前に西海岸の洞窟に着く。

今夜は曇りで月明かりも無く、海は黒く凪いでいた。

アスランは周りを見回してみたが、洞窟の入り口は無人。
『ユウナはまだ来てないみたいだ。』
人の気配は無く、波の音が繰り返すばかりである。

しばらく待ってみたがユウナは来ない。
『ユウナに担がれたのかもしれない。』
アスランがそう思い始めたとき、洞窟の奥から微かに音が聞こえた気がした。

アスランはヘッドライトを着けて、洞窟の中へ入って行く。

洞窟は立って歩ける大きさはあるが、それほど広くはなく、すぐに最奥に着いた。

そこには祭壇のような物があり、床には赤い敷物が敷かれている。
『行き止まりだ。』

アスランは耳を済ました。

「う、ん・・・」

祭壇の方からうめき声が聞こえてくる。

声のした方にアスランが近付き、赤い敷物の上に足を乗せたとき、小さくカチリと音がする。

次の瞬間、アスランは宙に浮いていた。
足元に四角い穴が広がっている。

とっさに手に持っていたピッケルを穴の淵に引っ掛けた。
アスランは穴にぶら下がる格好になる。

『穴が真四角!?人工物だ。』

アスランが上にあがろうとした時、何かに足をつかまれた。

「なっ!?」
アスランが小さく叫んだとき、ピッケルが穴の淵から外れる。

ドサッとアスランは穴に落ちた。
幸い穴はそれほど深くない。

アスランの手に何か温かい物が触れた。
自分の体の下に、人の感触を感じてアスランは飛び退く。

ヘッドライトが穴の底を照らす。
丸い光の中に見えたのは

「ユウナ!?」

紫の髪をぼさぼさに、頬から血を流しているユウナ・ロマ・セイランが、穴の底に横たえていた。


第3章へつづく)
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