ふたりの碧い想い

□序章 男の傲慢
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星明りの中で、オーブの夜の海はやさしく凪いでいた。

砂浜に金と藍の髪の二人が、解け合う様に影を一つにして、佇んでいる。
二人は時間を忘れたかの様に動かない。
口数少なく、時々言葉を交わしているようだ。


砂浜から少し離れたところに、高級車が一台止まっていた。
車のエンジンを止めたまま、御主人様に従っている運転手の顔は呆れ顔。
後部座席には一組の男女。

「ねぇ、いい加減にして。」
上品な美しい女性が苛立っていた。
自分を誘った男が、他の女に気を取られているのだから無理もない。

その男は、車の窓ガラスに鼻と両手を貼り付けて、じっと窓の外を見ていた。
視線の先には、砂浜の仲睦まじい金と藍の男女の姿があった。

男の表情は、大切な玩具を取り上げられた子供のようで、何とも情けない。
大きな体をしていても、とても成人男性の様とは思えなかった。
「うるさいっ、黙ってろっ!」
女を怒鳴りつける。

その男の名は、ユウナ・ロマ・セイラン。
砂浜に佇む金の髪の少女は、家同士で定められた婚約者である。
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