プロポーズを君に

□第9章 悲劇当日
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最初に声を上げたのは誰だったろう。
「わーっ!!?」
「きゃーっ!!」
「えええ??!」
空を切り裂くような悲鳴が飛び交う。

前日鼻先に一発喰らっていたシン。
「あ・・・」
彼の上着を染めていく赤い鮮血。


鼻を抑えるシンを見て、アスランはなんとも言えない独占欲に駆られる。
「後ろを向け!シン!!」
今のカガリを他の男に見られたくない。

「は、はいっ!?」
シンは素直に回れ右をした。
上官の命令に逆らえないのは悲しき軍人のサガ。

わけが分からないが、ここは退散したほうが良いとシンは思った。
「しっ、失礼します!」
シンは足早に立ち去る。

シンが部屋から出て行った音を聞いて、身をよじるように背を向けていたカガリが振り向く。

涙目の彼女があわててアスランに駆け寄った。
「アスラン、どうしてっ!?」

カガリは誰もこの部屋に来ないと聞かされていたのだ。
なぜアスランがここに現れたのか、彼女は訳がわからない。

しかもシンにまで醜態をさらしてしまった・・・

「どうしてって・・・カガリこそ、その格好は・・・!?」
アスランはカガリを直視できない。
彼女の姿をうつしこむゆらめく翡翠はぎこちなく瞳を閉じ、アスランはカガリに背を向けた。

「えっ、ああっ?!?」
カガリは胸を抱えるように隠してクルリとまわり、アスランと背中合わせになる。
「その・・・みんなからの誕生日プレゼントを試着していて・・・」

「誕生日プレゼント?」
カガリに背をむけたままアスランが質問した。
「今着ているそれが?」

カガリはしどろもどろで説明する。
「ああ。なんか皆、そろいも揃ってこんなものを・・・相談したみたいだな」

「相談って・・・」
振り向きかけたアスランの目にカガリの姿が入ってくる。
薄い布に覆われた彼女の白い素肌。
見てはいけないものを見てしまったように、彼は再び彼女と背中合わせになった。

「うーん・・・私、からかわれたのか?」
彼女はちょっとアスランのほうに目を向ける。
「試着した私が浅はかだったけど、アスランに見られちゃったし・・・」

アスランは今の言葉がひっかかった。
「もしかしてコレがキラの狙い・・・?」
つい振り向いた彼は、カガリと目が合ってしまう。

アスランが赤くなったので、カガリもつられて赤くなる。

この始末どうつけてくれるんだと、アスランは心の中でキラに文句を言った。

最終章へつづく)
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