僕と彼女と紫水晶

□第7章 ファーストタッチ
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目を開けると、救護室の天井とカナリアの顔が見える。

「アスラン?」

名前を呼ばれてアスランは少し意識を取り戻す。
大きく目を見開いてガバッと起きた。
頭に痛みが走る。
「いたいっ!」

もう一度横にならせる為に、キラはアスランの肩を押さえ込む。
「無理しちゃダメだよ。頭を打ったんだからね。」

紫の瞳のカナリアに、キラの特徴を読み取ってアスランは安堵した。
(さっきのは、本物のカナリアだったのかな・・・?)

「キラ・・・僕に肘鉄した?」
「何それ、するわけないでしょ。」

アスランはまだ浅い意識の中で思う。
「夢だったのかな・・・」

しばらくベットに横にならせてもらった後、アスランとキラは救護室を後にした。

少しうつむき加減で元気の無いアスラン。
キラは心配そうに覗き込む。

「大丈夫?アスラン。帰りは迎えに来てもらおうか?」
「ううん、大丈夫。ちゃんと帰れるよ。」

キラに弱った所を見せたくなくて、強がりで笑おうとしたアスランの頬に痛みが走る。
「いたっ!?」

キラが見るのも痛そうに目を細めた。
「あー、頭だけじゃなくて、ほっぺたも赤くて痛そうだね。どんな転び方したのさ。」
キラはアスランがオモチャの棚のそばで転んだと思っているようだ。

(ほっぺた?)
頬に手をあてるアスラン。
(はれてる、痛い。)

大きく息を吸い込む。
(肘鉄は夢じゃなかったんだ!)

「キラ、本物のカナリアがここに来てるかもしれない!」

キラが気の毒そうに目を細めた。
「そんな事ある訳ないじゃない。まだ頭がボーっとしてるんだね。やっぱり迎えに来てもらおうよ。」

「では、タクシーで帰りましょうか。」
お手伝いさんがいつの間にか、後ろに立っていた。

キラとお手伝いさんに引きずられるように、アスランは車に乗せられる。
「ホントなんだ、カナリアそっくりな子がいたんだよ!!」
「はいはい、帰ろうねアスラン。」

タクシーはわめくアスランを乗せて、オモチャショー会場を後にした。


(第8章へつづく)
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