ふたりの碧い想い
□序章 男の傲慢
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一方、砂浜でカガリを腕の中に収めて佇んでいるアスランは戸惑っていた。
少し夜の散歩に行こう、とカガリに誘われて出掛けたまでは良かったのだが・・・。
カガリは忙しすぎて、毎日を仕事に忙殺されている。
夕食後の少しの時間とはいえ、散歩なんて普段はままならない。
アスハ邸では常に使用人の目がある。
一緒に住んでいても二人っきりでいい雰囲気には中々ならないのが現状だった。
だから、アスランは小さな期待を胸に、屋敷を出たのだ。
だが、カガリの様子がおかしい。急にテンションが上がったり下がったり。
何かあったのだろうかとアスランが心配し始めたその時、今まで一度もカガリから聞かれた事のない質問をされた。
「なぁ、アスランとラクスって・・・婚約者だったとき、どんな感じだったんだ?」
カガリは目も合わせず、少し沈んだ表情で聞く。
「どんな感じって・・・」
アスランはカガリが言わんとしている事を、なんとなく分かってはいたが、それを口にすることは躊躇した。
「こんなふうに抱き合ったりとか、した?」
カガリはアスランの背中に回していた手の力を少し強くする。
やはり今日のカガリはおかしい。そう思いながら、アスランはありのままを伝えることにした。
「君が、心配するような事は何もなかったと思うよ。ハグ位はあったけど、抱きしめる事は無かったし。挨拶程度に、頬にキスしたことはあったけど、それ以上は何も無い。」
アスランはカガリを見つめる。
カガリも顔を上げて、アスランを見る。
その瞳は何か言いたげだ。
『信じて貰えていないのだろうか?』
少し気持ちの沈んでしまったアスランは、今まで言わないようにしていたことを口にしてしまう。
「君とユウナは、どうなんだ。」
何も無い。
カガリはそう言ってくれると、アスランは期待していた。
だが返ってきたのは、沈黙。
アスランの背中に回っていたカガリの手が外された。
カガリは狼狽して、琥珀を涙で潤わせる。
頭を鈍器で殴られた様にショックを受けた後、アスランの心の中に波がざわめく。
同じ時同じ場所で、二人の男は互いに嫌悪を抱いていたのだ。
アスランvsユウナ
戦いの幕は静かに切って落とされた。
(第1章へつづく)