桜が舞う龍の道

□sadistic music∞factory
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都市から離れた山奥。
其処には“ある工場”があった。
工場の名前は、


sadistic music∞factory


暗い闇の中重い鎖が音を立てて崩れ、錆び付いた鉄の門が開いた。まるで訪れた人間を受け入れる様に。
自動でレバーが動き山の様に積み重なったパソコンや街中にある液晶テレビの画面が点いた。集団は画面には英語でmost.dangerやheaven&hellなど出たが何一つ読めず先に進むと人影が見えた。

「ようこそ俺の音楽工場へへへへへ!!!」

喋り方出した者は人間ではない。後半の人間離れした声は今大人気の“だてっぽいど”だ。
BASARALOIDとは自分が歌えない曲や歌は苦手だがボーカルが欲しい等、そんな願いを簡単に叶えるのがBASARALOIDなのである。
自分の声を自ら加工しただてっぽいどの声は少し不気味さを醸し出す。

「住み込ミでOK!只ズット個室で俺に新鮮な音楽を絶え間なく作ってクレタラいいんだ。アンタらノ食い物トカはこっちが用意するし風呂モゴ自由に!」

BASARALOID特有の違和感のある話し方でだてっぽいどは工場の仕組みを話す。
「他に欲しい物があったら言っテクレ。出来る限り用意するからナ!」

全て理解し、だてっぽいどに個室を案内してもらおうとしたら一人の人間がだてっぽいどの元に走って来た。

「大変ですだてっぽいど“様”!!!」

だてっぽいどに“様”を付けるなど違和感を覚えたが走って来た人の話を聞く事にした。

「皆マデ言うな。分かっテル」

何が分かったのか疑問符しか浮かばないがだてっぽいどは先程立っていた所に戻って行く。

「この際だ。アンタらに見せてヤルヨ。脱走者の末路を…」

脱走者の…末路…。
意味深な事を話す。
そもそも、脱走者とはなんだ?
まるで此処で働いているのが囚人の様ではないか。

「music start!!」
工場長の合図で工場内に音楽が流れる。

『ここに貴方達を連れてきたのは他でもない
オレに新鮮な「音楽」を絶え間なく届けて欲しい
幾千幾万の歌を消費して 摂取してこの体躯(からだ)を保つために ずっとずっとたくさんの人にそばにいてほしい
だって人類貴方達もほら 食物取り入れ代謝するように音楽が無いとオレだってほら3日で餓死する可能性だから』

流石BASARALOIDだ。こんなに早く言いずらい言葉を歌いあげる。

『とっととオレに音楽(たべもの)を作ってください 作りやがれ さぁ
きっともっとずっと カッコイい笑みでせがめる自信があります!』

だてっぽいどはある場所を指差した。其処には犯罪者みたく檻に人間は入っていた。

『こら!そこ!手を休めるんじゃねぇ!見ていないとでも思ったのか?
次に手を抜いたら 生きてここを出られなくなるからそのつもりで・・・・・・な?』

だてっぽいどは両手を勢い良く広げると床から大きなスピーカーが出てきた。
両手を上へ上げればスピーカーも上がる。

『どこまでも どこまでも追いかけて 追い詰めて 甚振り捕まえ
「オレ」という大きな枷を一生背負ってもらうからな 死ぬまで満たされない苦しみを共にしよう?』

だてっぽいどが工場で働く作業員を数えているとだてっぽいどの背後に工場内で一番大きい液晶テレビがスピーカーと同じ高さから現れた。
「あれー 一人足りないなー まさか本当に逃げたのかなー? まさかなー」

『食べても食べてもお腹が減るの 貴方達にはわからないだろうけど
どんなに言葉を紡いだところで 糧になるものが何一つ無い』

だてっぽいどは人間離れした動きを見せる。

『食べても食べてもお腹が減るの アンタ達にはわからないだろうけど
常時アグレシヴ
焦燥感 お願い これ以上 怒らせないで』

だてっぽいどは後ろに振り返り液晶画面を見上げる。其処には逃げ回る人が二人映っていた。
*
「ハァ!ハァ!っ!!は、早く逃げなちゃ!!殺されるっ!!」
がむしゃらに、走って、曲がって迷路の様な工場内を出口に向かっているが中々出れない。
次に左へ曲がれば真っ暗な渡り廊下があり足を入れた瞬間上下左右に設置された画面が白く光った。
「命知らずな脱走者だこと。一体どこにいったのー?」
全ての画面にだてっぽいどが映る。
「ぁ、あぁ…!!あがっ!!」
「く、来る…!!逃げなっ逃げないと…!!!」
恐怖の余り口を開いたまま大量の汗を吹き出している。
そして一度黒くなり転々と場所を変えあちらこちらにだてっぽいどが映る。
そして後ろからガチャン…ガチャン…と静かにロボットの動く音が近付いてくる。
「く、来るな…!!来るなっ!!!来るなぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
二人の叫び声が響く。

『みーつけたー』

*
『決して拭いきれない すべて無へと還る恐怖
死とは無縁なはずなのに 常によぎる最期の時
音が途絶えそのまま 過去に置き去りにされると
思うだけでヒステリック 思考回路軋み疼き』
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