桜が舞う龍の道

□笑ってくれない恋人
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昼過ぎ。
私の恋人、伊達政宗が泊まりに来た。
なんでも奥州は雪が降り寒いから。とゆう我が儘な理由で来たそうだ。
私は理解している。本当は私に会いに来たのだ。
素直じゃないがそこがまた可愛らしいく愛しい。
今夜床に運ぼうと思うが竜の右目がいる。右目は私達が付き合っているのを知っている。なのに体を繋ぐ事を良しとしない。
邪魔な人間だ。だが伊達が信頼しているし兄や親のように慕っているから斬る事が出来ない。昔なら切り刻んでいた。

「疲れただろう。今日は部屋でゆっくり休め」
「Thanks石田」

夜は事に運びたかったが右目のせいで無理だった。
まぁ、三日間泊まるらしいから一度は出来るだろう。翌日、伊達は私以外の人間と仲良くしていた。
私には向けてくれない笑顔。
苛々する。
官兵衛や金吾に当たりに行くか、と思ったが伊達がいる。少しでも一緒にいたい。
そうだ、彼奴がいる。

「だからって俺に当たらないで下さいぃぃ!!!」
「煩い!!!」
「ぎゃあああ!!!」

左近に当たる事にした。

「理由は一つッスよ!!三成様が笑顔を伊達に見せないからですよ!!」
「何…?」

刀を一旦しまった。
私がだと?

「言ってしまうか…
。三成様、実は先程伊達に言われたんですよ、『石田の笑顔を見たいんだ』って」

伊達が…何故私に言わないのか…。

「俺に言ったのも本人が三成様に言うのが恥ずかしとか気付いて欲しいとかじゃないッスかね。とりあえず笑顔の練習してみて下さいよ」
「……」
「三成様…?」

とりあえず部屋に置いてある鏡の前に座ってみた。
まず口の端を指でクイッと上げてみた。
私には似合わない。自分でも引く。
どうしたものか…伊達が見たいと言うならば努力はするが…。
暫く練習して休憩で廊下に出たら伊達が城下に遊びに行こうと言ったので行く事にした。
久々に普段着を着たような気がする。

「dateみたいだな!」
「でーと?」
「恋人同士が出掛ける事だ。こんな風に手繋いでみるとかな!」

伊達が私の手を握った。
ああ、伊達は何しても可愛らしい。

「お、三成〜独眼竜〜!!」
「家康!」

伊達は私から手を離し家康に駆け寄り私に見せない笑顔を家康に向けた。

「可愛い笑顔だな独眼竜!ワシ食いたくなったぞ?」
「Haha!何言ってんだクソ狸!」
「いぃぃえぇぇやぁぁすぅぅ!!!!!!!!!!」

腹が立った。
家康に対してでもあるが伊達が家康に笑顔を向け
仲良くしている事も腹が立った。

「逃げ足が速い狸めぇ…!!」

伊達は家康と会った所から動いておらず野原に座って待っていた。

「かーえりー」
「伊達」

伊達は退屈そうにしていた。悪い事をしたので団子屋で奢った。
それから着物や簪屋なんかも見に行った。
時が流れるのは早い。
日も暮れ始め帰る事にした。伊達に夕餉を食べろ、と言われたが腹が減っていないからいらん。と言った。それよりも練習の続きをしよう。
すぐ出来ると思っていたが笑顔とはこんなにも難しいとは思いもしなかった。

「風呂入るか…」

一日の汚れを流し、また練習。
知らぬ間に夜中に。
何となく廊下を歩いていると伊達が庭の池の前で座り込み鯉を眺めていた。

「伊達何をしている。風邪引くぞ」

伊達の肩が軽く動いた。

「べ、別に。眠くないだけだ」

庭に降り伊達の隣に座った。
草履が無いわけでは無いのに置いてある草履を履かず伊達は裸足のまま池の前でしゃがんでいた。

「念の為だ羽織っておけ」

私は羽織っていた紫色の陣羽織を肩に掛けた。裸足だった故に体が冷えている。
これで少しは暖かくなるだろう。

「今日は随分と周りの人間と親しくしていたな」

不意に思い出し口にしていた。

「してねぇよ。何時も通りだ」

ふてぶてしく返ってきた。

「いや、していた笑顔だった。私が居ながら浮気とは」
「してねぇから」

矢張り誰かいるのだな。
誰だ私の伊達の心を盗んだ輩は。残滅してやる。

「ならば何故他の人間と親しくしていた!」
「それはお前がっ!」

伊達は言葉を飲み込んだ。

「お前が…」
「私がなんだ」
「え…を…」
「はっきり言え」

問い質したら伊達は顔を歪ませ私に言った。

「お前が…俺に笑顔を見せてくれねぇからだよ!!!」

泣きそうな声で伊達は言った。
そんな表情と声で言われ私の何かがズキッと痛んだ。

「俺…不安だった…お前はもう俺に…飽いたんじゃないのかってッ…無理して俺と付き合ってるんじゃないのかって…」
「……」

まさか…そんな思いをさせていたとは…。
私は手を伸ばし伊達を包んだ。冷えた体を温めるように宥める様に。

「そうだったのか。すまなかった」
「良いんだ…俺の我が儘なんだから…」

私はおでこに触れるだけの接吻をした。
こんな事しか出来ない自分が悔しい。こんな事で伊達が泣き止む事はないし、もしかしたら逆効果なのかもしれない。
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