桜が舞う龍の道

□無表情な恋人
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俺の恋人は無表情でとても怒りっぽい。
特に俺関係になると。
想ってくれて嬉しいんだけど、不安にもなる。
何度も大阪城に遊び行ったり来たりしてるのに一度もアイツの笑顔を見た事がない。
本当に俺の事好きなのか…?

「……」

今は大阪城に遊び来てて縁側に座り優雅に泳ぐ鯉を見ている。

「政宗様?はっ!!もしや石田が何か!?政宗様!シバいて来ます!!」
「いや、いい!!違うから!!」
「ならば何にお悩みで?」
「……実はな…」

小十郎に隠し事は簡単に見抜かれてしまう。だから話した。

「それならばワザと周りの人間に笑顔を向けてみたら如何か。石田は嫉妬深い故、『何故他の人間と仲良くする』と言いましょう。その時に政宗様が『どうして笑顔を見せてくれないの?』とでも言えば考えてくれるでしょう」

流石小十郎nice adviceだ。それならアイツも考えてくれるし本心も分かる。
早速実行してみよう。
まず小十郎に笑顔。次に左近。次に大谷。たまたま城下にいた家康に笑顔。
家康にまで笑顔を見せたんだ。とびっきりの笑顔を。なのに石田の奴。一切表情を変えない。唯一変えたのは家康を見て追い掛けた時だけだ。怒り狂った顔。
やっぱり石田は俺に飽いたんだな…。

「はぁ…」

空には三日月に輝く星達。奥州は雪が降る日が増えているが大阪は今が紅葉時期。日の本は凄いな。
池の鯉は俺の気持ちも知らず楽しそうに泳いでやがる。

「伊達何をしている。風邪引くぞ」

こんなの奥州に比べたら薄着で十分、十五分だっつーの。

「べ、別に。眠くないだけだ」

石田が隣に座った。

「念の為だ羽織っておけ」

そう言って自分が羽織っていた紫色の陣羽織を肩に掛けてくれた。
石田の温もりが心地良い。

「今日は随分と周りの人間と親しくしていたな」

お、hitしたか?

「してねぇよ。何時も通りだ」
「いや、していた笑顔だった。私が居ながら浮気とは」
「してねぇから」
「ならば何故他の人間と親しくしていた!」
「それはお前がっ!」

待て己よ、ジラすのだ…。

「お前が…」
「私がなんだ」
「え…を…」
「はっきり言え」

よし今だ!!

「お前が…俺に笑顔を見せてくれねぇからだよ!!!」

泣きそうな声で言えば十分だろ。
あれ、なんか本当に泣きそう。

「俺…不安だった…お前はもう俺に…飽いたんじゃないのかってッ…無理して俺と付き合ってるんじゃないのかって…」
「……」

片目から涙がポロポロと流れる。
石田は手を伸ばし俺を包んだ。

「そうだったのか。すまなかった」
「良いんだ…俺の我が儘なんだから…」

おでこに触れるだけのキスをしてくれた。
そして石田は俺に背を向けた。
終わり…か…。

「…習して…だ…」
「Ha…?」
「今笑顔の練習をしている最中だっ…!暫く待ってろ…!!」

笑顔の…練習…?

「ぷっ…ははは!!!」
「わ、笑うな!」
「そ、sorryッ!!でもっ!!お前が笑顔の練習って!!腹イてぇ!!!」
「見せてやらんぞ!」

石田が笑顔の練習してる風景を想像したら笑いが止まらない。

「で、でもなんでっ!練習を…?」
「左近に言われたのだ。“笑顔の練習しろ”と」
「へぇ…」

左近言ってくれたんだな。

「やはり私には無理だった…。笑う事さえ習得出来ず伊達を泣かせてしまう始末…」
「石田…」

ダメだ、涙が止まらない。

「私はお前を傷付ける事を言ってしまったのか!?」
「ち、がう…嬉しいんだ…一生懸命俺の為に…それなのに俺は…お前を疑った…」
「伊達は悪くない。私がただ不器用なだけだ」
「石田……あ…」
「どうした」

頭を撫でてる時、お前はそんな顔をしてたんだな。
恥ずかしくていつも俯いてたけど、初めて見た。
その微笑み、俺だけの表情だ。

「練習…頑張れよ」
「分かっている」

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