桜が舞う龍の道

□Partyはディナーのあとで
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「やー政宗君!今日も我が輩の華麗な推理劇を見たかね!?」
「あーハイハイ見た見た。凄かったなー俺には無理だぜ。流石俺の自慢の上司、叔父だ。俺はアンタの甥で良かったぜ」

まるで決められた褒め言葉を述べるのは新米刑事、伊達政宗である。その隣にいる背の高い男は政宗の上司でもあり叔父でもある最上義光だ。夜遅くまで仕事をしたとゆうのに最上は元気がある。なんせ、自分の推理で犯人を逮捕出来たからだ。と彼は言い張る。だが“政宗の推理で”が正しい。
最上義光と言う男はすぐ調子に乗り、人の手柄を自分の物にする狐である。
例えば最初に「自殺だ!」と決めつけ政宗やその他の人に「他殺だ」と言われれば自殺をごり押ししていたのが一変して他殺と成り代わる。何が何でも完全無欠勝ち組になりたがるのだ。
こんな男でも警部になれるなど世も末だ。
そんな上司の部下、政宗のタメ口は最上本人が許した事で偉い人が居る前以外はタメ口である。

「政宗君。君、徹夜だろ?今日は早く帰って休みたまえ」
「え?あ、あぁ…じゃあ…お言葉に甘えて…」

関白を誇る矛盾狐からの気が利いた言葉に政宗は理解するのに刹那の時間を消費した。
最上と別れたあと政宗は帰る支度をして外へ出た。
その間も先程入った事件で頭がいっぱいだった。手掛かりも少ない今回の事件。どうして自分は警察官になったんだ!と解決出来ない事にイライラした政宗は小石を蹴り飛ばした。
すると小石は黒く輝くリムジンに当たってしまった。運転席のドアが開くと今では珍しい燕尾服に身を包んだ左頬の傷が印象的な大柄な男が出て来た。
男は片足を折り車に付いた小さなキズを軽く撫でた。政宗はすぐさま駆け寄り頭を下げ謝った。

「ごめんなさい!!修理代はいくらになりそうですか?」
「八十万程かと」
「なんだ、小十郎か」
「お帰りなさいませ政宗様」
「迎えに来てくれたのか」
「はい。もうお時間かと思いまして」

片倉小十郎は伊達政宗に仕える最高クラスの執事である。
まだ政宗に仕え一カ月程だが屋敷にも馴染み政宗も信頼しきっている。
小十郎は政宗が車に頭をぶつけない様に乗り口の上に手を添えドアを開けた。

「Thanks」

政宗が住む屋敷はとても大きい。
最上の屋敷も負けず劣らず大きいのだが、政宗の屋敷と比べたら小さい。政宗は屋敷に戻ると仕事服から私服に着替えた。どこぞの坊ちゃんを連想させる服である。これは政宗の趣味ではなく母、義姫の趣味である。
父の輝宗も気に入っているらしい。
政宗が屋敷に居る時に二人が居れば一日何回かは抱き付くのだが、今はイギリスに出張中で屋敷には年に数回しか帰って来ない。
政宗は客人が来たときに使う様な縦に大きいテーブルに並んだ料理を見ながらこれまた大きい椅子に座り何か悩んでいた。

「はぁ…」

政宗は小さな溜め息を吐いた。

「何かお悩みの御様子」

政宗の前にメインディッシュを置いて小十郎は言った。

「いやな、今日前回の事件を解決してまた新しい事件が入り込んできたんだ」

政宗に入り込んで来た事件とは、有名動物病院の医院長が毒を盛られ殺されたとゆう事件だった。

「ワイドショーでもやっておりました」
「もうやってたのか」
「えぇ」

政宗は鶏肉を口に運んだ。

「お口に合いましたか」
「deliciousだ、小十郎」

小十郎は感謝の言葉を述べ一礼すると政宗の悩みを聞いた。

「オッサンは自殺だ、と決め付けてる。――キャップシールが付いてるワインに毒なんて盛れないからな…ヤッパリ自殺なのか…?」

小十郎は政宗の独り言を聞き逃さなかった。

「いいえ。コルクがあっても毒は盛れます」
「は?」
「こちら、ベルギー産一九九五年の白ワインで御座います」

政宗は小十郎の発言に疑問符を浮かべた。小十郎を見ればいつもの男らしい顔付きだ。

「今は仕事の事を忘れお料理に認め下さいませ」

手慣れた手付きでワインのキャップシールをソムリエナイフで剥がしコルク栓を抜きチューリップ型のワイングラスに白ワインが注がれる。
汚れ無いワイングラスの輝きで白ワインも更に輝く。小十郎に言われ仕事と一線引こうとしたが、今回の事件はワインが関わっている。
ワイングラスを見つめ政宗はどうしたら未開封のワインボトルに毒を盛れるか考えていた。

「政宗様、余程お悩みのご様子。どうでしょう、私めにお話されてわ。微力ながらも力添えを致したく」

少し微笑んでいる小十郎に違和感を持ちながらも話す事にした。
政宗の話は少し長くはなってしまったが、小十郎は聞き始めの姿と変わらずかしこまったままだ。

「成る程。医院長は再婚を考えていたが家族に猛反対され、落ち込んだ医院長は特別な日に呑むと決めていたワインに毒を入れ自殺した。と、政宗様と最上殿はお考えなのですね?」

政宗は料理を口に含み頷いた。

「あ」

小十郎は何か思い出した声を上げ一度政宗に背を向けた。
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