桜が舞う龍の道
□893と死神武将
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神、仏、悪魔、幽霊など目に見えないモノは信じる人間と信じない人間に分かれる。
俺は断じて信じていない。なんせ見た事ないからな。見えないモノを信じるなんて馬鹿げてる。
「冗談ならもっとまともな冗談しろクソ餓鬼」
「クソ餓鬼じゃない…俺は“死神”…だ」
ソファでくつろいでいた俺の膝上に跨がって座る右目を黒い眼帯で隠した餓鬼は己を“死神”と言い張る。いきなり玄関のドアをぶち破り土足で家の中に入り死神と言われても信じるか?信じる人間もこればかりは信じないだろう。
「信じられるかボケ」
子供の頭を撫でる様に撫で気が済んだか?と一言言い餓鬼を玄関まで送った。
「ほら、帰った帰った」
餓鬼を送りまたくつろごうと振り返ればさっきまで俺の膝の上にいた餓鬼がいた。
「うぉあ!?」
「……」
餓鬼は片手に三本の日本刀を持っていて右腕を上げ刃先を俺に向けた。
「俺の死神の武器(デスサイズ)…」
「銃刀法違反だぞ、餓鬼」
「お前も人の事言えない…893…」
893って…。
まぁ合ってるから否定はしないが…。
つか、日本刀三本も持つなんて握力と腕力どんだけだよ。
「んで、その刀で俺を殺んの…っ」
一瞬目の前から餓鬼が消え景色は白くなり意識を手放した。
*
何時間意識を手放したんだろうか…。頭はボーッとして体がフワフワする…それに目線の高さが何時もより高い…。
下を見れば俺が倒れてる。
……。ん?俺が倒れてる?おかしくねぇか?
普通己が己の姿を見るなんてカメラで撮ったり鏡を使わない限り不可能だ。
なのに何故今己は何も使わず見れている?
「起きたか…?」
「ぁ…?………。あああぁぁぁぁぁ!!!!!????」
俺の下半身は幽霊のイメージの波打つベタな姿で先を餓鬼は風船の紐を握る様に握られていた。
「ちょっ!?これどうなってんだ!!?」
「アンタは今、あの世とこの世の狭間にいる…俺が掴んでるからあの世には行かねぇ…。世間一般で言うと幽霊だ…」
「ふざけんな!!!元に戻せ!!!」
「信じるか?」
「あぁ!?」
「俺が死神…信じるか?」
今の餓鬼の声音には色々と自分の生命に関わりそうで俺は餓鬼に降参した。
「信じる!!信じるから今すぐ戻せ!!」
再度意識を無くし目が覚めると魂は自分の体に戻っていた。
「これからお世話になります…」
俺はもうどうでもよくなってお辞儀する餓鬼にヒラヒラと手を振った。
今なら神、仏、悪魔、幽霊…つか、八百万全て信じられるわ…。