桜が舞う龍の道

□痴話と喧嘩は紙一重
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痴話。
それは愛し合う者どうしがたわむれてする話。
喧嘩。
それは言い争いをしたり暴力を用いて争ったりすること。
二つ合わせて痴話喧嘩。
カップルや夫婦には付き物で無い方が有り得ない事である。
桃太郎はそう思っている。だから二人の事はほっといていた。
二人とゆうのは鬼灯と白澤である。
何千年とゆう長い両想いとすれ違いから抜け出し先月ようやく結婚式を挙げたのだ。
それはもう天国と地獄がひっくり返るのではないか、世界が滅びるのではないのか、など噂たったものだ。
結婚したからと言って同棲はしていない。代わりに毎日会いに来ている。
週三で鬼灯がスッキリした顔で出廷をする事はすぐ慣れた。
イチャイチャとする姿を目の前で見せられた時はぶん殴ろうかと思ったが何とか押さえ微笑ましく見守った。
だが今耳にしている喧嘩は付き合う前、互いに毛嫌う時にしていた喧嘩だ。
二人の言い争う声が店内に響き扉を開けようとした客は開ける事せず帰って行く姿を何度も見た。

「鬼灯なんて大っ嫌い!!」
「私だって貴方なんて嫌いですよ。どうして貴方と結婚をしたんでしょうか」
「それはコッチのセリフだ!!どうして分かってくれないんだよこの一本角!!ハゲ鬼!!」
「貴方も何故理解しないのです。豚だからか。そうか豚だからか」
「豚豚言うな!!馬鹿!!もういい!!お前と話なんかしたくない!!帰れ!!そして二度と僕の目の前に姿を現すな!!!!!」

白澤は一瞬驚いた表情だったような気がして確認しようにもすぐ背を向けたので確認する事は出来なかった。

「言われなくてもそうするつもりですよ。さよなら白豚、どこぞで野垂れ死ね」

鬼灯は扉を壊す勢いで閉めて去って行った。
事の一路を見ていた桃太郎は何も出来ず背中を向けたままの白澤に一言声をかけた。

「はくた…」
「ごめん、一人にさせて」
「…すいません…」

白澤の温度も無い冷たい口調に少し怯えた桃太郎は扉を開けチラリと白澤を見て外に出た。兎達も白澤から逃げる様に桃太郎の間を通り抜け外に出た。
不思議と外が暖かく感じた。

「ああ、鬼灯くん。白澤くんは〜…行っちゃった…」

鬼灯は帰ってくるや否や早歩きで閻魔の声に耳を傾ける事もせず自室に戻って行った。

「何かあったのかしら…」

先程まで閻魔と会話していたお香は頬に手を添え首を傾げた。

「誰と?」
「白澤様と」
「えぇ!?あのケンカップルからバカップルになった二人が!?」
「何故だかパイナップル食べたくなったわ」

二人は鬼灯が去って行った長い通路を見詰めた。
もしお香の推測が正しければ通路の長さが鬼灯と白澤の距離を表している様で閻魔は悲愴な顔を見せた。
鬼灯の部屋から鈍い音が絶え間なく響き、その音は閻魔の心に傷を付ける。

「閻魔大王…?」

心配になったお香は閻魔に声をかける。

「大丈夫。何でもないよ」
「そうですか?ならいいのですが…」

二人の元に桃太郎がやってきた。
外に出たのはよいもののする事が無く閻魔に相談しようと地獄へやって来た。

「大変ね」
「そんな事があったんだ…」

桃太郎は一から百を数える様に事細かく話した。
事の発端は白澤の言葉からだった。

『僕、女の子にもなれるから子供が作れるよ!』

少し一般と異なる発言だが夫婦の在り来たりな日常会話だった。
桃太郎も聞いた時は子供が産まれたら賑やかになるなあと楽しみにしながら期待をしながら聞いていた。
鬼灯も即作りましょうと答え、何人にしようか子供産まれたら店の側に家を建てましょうか等更に未来絵図を描く。
暫く二人の会話をBGMにしながらのんびり薬を調合していると家を建てる事までは決まったが子供の話
は中々決まらなく様々な意見が飛び交い水掛け論になっていた。
お互いの性格のせいなのか一歩も引かないし譲りもしない。ますます二人の口論はヒートアップして冒頭の痴話喧嘩に発展したのだ。桃太郎は重たい溜め息を吐いた。

「二人の性格だと仕方無いと思うんですが…」
「でもぉ…あのままだと“離婚”しちゃうんじゃないかしら…」

お香に二人の視線が向けられる。

「なんとか縒りを戻してもらわないとっ!!」
「そうだね!でもどうすれば…」
「そうねぇ…」

三人は同時に溜め息を吐いた。
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