桜が舞う龍の道

□縋り付く
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人間は何かに縋り付いて生きていると思う。
弱者は強者に。
強者は神様に。
神様は誰に縋り付いているのだろうか。
意外にも人間だったりするのかもしれない。自分を崇めさせるために。
物の怪も縋り付いているのだろうか。
私も縋っている。別に縋ってはいけない、許可を得なければいけないとゆう事は無いのだから鬼でも縋り付いても良いだろう。何も問題は無いし問題は発生しない。
何に縋っているか?
私は、

「貴方に縋っています。白澤さん」
「僕は縋られる様な事してないけど。つか、まず気持ち悪い」

貴方は覚えていないでしょう。貴方にとっては些細な事でどうでも良い事でしょうね。
でも私には一大事で大切な事なんです。
私の運命の歯車が狂う前。私は貴方を親の様に慕っていました。
知恵を教えてくれて、その上温かいご飯に童の性(さが)である昼寝にまで付き合ってくれた。これが母親の温かさか、と感じた。男に使うものではないがそう感じた。
もしかしたらその時から縋り付いていたのかも知れない。離れたくない、離れて欲しくない。ずっとそばに居たい、と小さい手で小さな足で必死に追い掛けて今でも貴方を追い掛けているのかも知れない。

「過去に縋り付く
なんて女々しい男だな」
「自分でも思ってますよ。反吐が出る程に」

私は人形だ。操り人形。
白澤と言う人形師に作られ飽きるまで操られ遊ばれる無様な人形。

「僕が人形師ねぇ。だったら人形が産みの親である僕に暴力したら駄目だよね」
「それとこれは別です」
「んだよそれ」
「ですが、その代わり貴方は私を人形を殺せるんですよ壊せるんですよ?何時でも今すぐにでも」

今日の白澤さんは違和感を持ちます。
私は本当の事を言っただけです。
何故そんな悲しい顔をするのでしょうか。犬猿の仲の私達にしたら殺せるなんて最高な事じゃないですか。

「そうだな。すぐ壊せる。今すぐ殺せる。お前を殺せるのは唯一この人形師(僕)だけだ。なんせ僕が」

白澤さんは不敵な笑みをしながら言う。

「“そうゆう体にした”からね」
「……そうです。この生は魂は貴方の物です。故に私は貴方の手で操られる人形です。何故貴方は繰り糸を切らないのですか?」
「面白いから楽しいから。長年生きてると暇でね。暇つぶしって感じ」
「流石神獣。伊達に生きてないですね、ジジィ」
「彼の伊達政宗の如く粋に派手に生きてるよハゲ鬼」

所詮は私も神の暇つぶしに使われる玩具なのです。
ボロボロになるまでか飽きられ捨てられるか。それか己が疲れて足を止めた時か。
まぁ、一つの賭け、博打です。神と鬼の。
誰が賭けましょうかこんな果ても見えない勝負に。
誰もいませんよね。
私もいい加減飽き飽きしています。
でも止めたく無いしずっと貴方を追い掛けたい。そして貴方の隣に立ちたい。

「貴方は私の事が嫌いですか?」
「嫌い、大嫌い」

矛盾はしている事は自覚してますよ。
縋り付いているのに追い掛けているなんて矛盾でしかない。
ですがね、今の関係が落ち着いているのも事実なんです。
近過ぎず離れ過ぎず、絶妙な距離。
一生どちらかが朽ちるまでこのままで居たい、と縋っていたい。

「反對」
「はい?」

その笑み。懐かしい。
言葉は分からないけど、伝えたい事は分かる。
かもです。

「ねぇ、僕に何言いたいのさ」
「単純に所詮私は貴方に縋り続けながら」

貴方の隣に立ちたい、と思う操り人形なのです。

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