Operation
□堕落
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「最後の晩餐とでも」
ワインが入ったグラスを小さくぶつける。
テレビをつければ地球滅亡だの何だの騒いでいる。暇な奴らめ。
「そういえば、日付け変わったな」
「ああ、22日だ」
「ところで先生や、あんたのところは滅亡してないかい?」
「お前さん、馬鹿か。同じ空間にいるのに何故そんな事を聞く。それよりお前さんが今見えてる世界、実は天国なんじゃないか?」
酔っているのか、眠いのか、塞ぎがちになった目蓋と、まるで女のようなぽってりした唇を薄く横に伸ばしながら男は俺に言った。
「俺が天国にいる訳なかろう。地獄だよ」
同じ表情をして言う。
「はははっ!そうかい、そうかい。キリコ、いい事を教えてやる。閻魔大王はな金次第で地上に戻してくれるらしいぜ。5000万くらい積めば、生き返れるんじゃないか?」
「地獄の沙汰は金次第ってか?閻魔殿の金銭感覚は分からないからな」
「ですなぁ。奴の金銭感覚は分からない。もしかすると誰かのように高額を請求すれば、誰かのように風車1個で済ませてしまうかもしれない」
先生、それあんたの事じゃないか。
もしも閻魔大王が先生なんだとしたら
「もし閻魔殿が先生みたいな奴だったとしたら、一銭も払わないね」
「そうかい」
「ああ。どこまでもあんたと堕ちてやるさ」
一生、地獄だって構わない。