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□声が優しいのはずるいと思います
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「ご心配、おかけしました」

「………」



花礫くんは怒っているのでしょうか。
返事どころか、反応もしてくれません。


……困りました。




私が困って何も言えずにいると、微動だにしなかった花礫くんがゆっくりと動き、近付いてきた。


そして、私のいるベッドよ前に立つ。



「…花礫く……」

「心配した」




ぎゅっと、花礫くんに抱き締められた。

耳元で囁かれるように言われた言葉に胸が締まる。




「…すみません」

「名前呼んでも返事しねぇから…このまま起きないんじゃないかと思った」

「……名前たくさん呼ばれたのは聞いていました。答えられなくてすみません」

「…お前、名前呼べばいつも嬉しそうに笑うくせに、全然反応しねぇし」

「花礫くん…」

「…本当に、心配した」

「…ありがとうございます」

「ありがとうじゃねぇバカ」

「でも、花礫くんがそんなに心配珍しいですから!やっぱり嬉しいです!」

「……俺、いつもお前のことは心配してるつもりだけど…」

「え…?」

「…………」




花礫くんが、いつも私の心配を?

花礫くんが……




「…だから、今回はマジ焦った」

「………すみません」

「お前がいなくなったらどうしようって、本気で思った…」

「花礫くん…」



さっきよりも強く、ぎゅっと、抱き締められた。
温かくて、心地良い…



「…ずっと、俺の傍にいてくれよ…頼むから…」





そんな声で、そんなこと言われたら……ノーなんて 言えるわけないじゃないですか…


私は答えるように、花礫くんの背中に手を回し、ぎゅっと、抱き締め返した。



「……好きだ、フィオナ」




いつもと違う優しい声。


バクバクと鳴る心臓は私自身よりも正直に心を反映している。


花礫くんの普段見れない一面に、素直な言葉に声音。



もう…さっきから



声が優しいのはずるいと思います



こんなにも貴方が愛しい。


大好きです、花礫くん!


end

→おまけ、後書き
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