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□声が優しいのはずるいと思います
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やばいと思ったときにはもう遅くて……へま、しちゃいました。



「フィオナーーーっ!!」



あ、花礫くんが名前を呼んでくれた。

滅多に呼んでくれないから呼ばれたときは凄く凄く嬉しいです。

それに、ドキドキします。

やっぱり私は花礫くんが大好きなんだと実感もします。



「おい!フィオナ!フィオナ!!」



花礫くんがこんなに名前を呼んでくれるなんて珍しい。
早く答えたいのに、声が出ない。


花礫くん、大丈夫ですからそんな顔しないで下さい。
もっと違う場面でいっぱい名前呼んで下さい。


言いたいことは沢山あるのに、答えられない。



「フィオナ…っ!!」



大好きな彼に呼ばれた自分の名前を最後に、私は意識を手放した。



◇◆◇◆◇



………聞こえる。


无くんの必死な声。

與儀くんの泣きそうな声。

ツクモちゃんの心配そうな声。

平門さんの落ち着いた声。

花礫くんの、私を呼ぶ声。




「………あ、れ…」



目を覚ませば、そこは見覚えのある部屋。

…貳號艇に帰ってきたんですね。



「フィオナちゃん!」



嬉しそうな声の方を向けば、のし掛かってきた无くんと與儀くん。

……痛くて苦しいです。



「…痛い、です」

「わー!!ごめんねフィオナちゃん!!」

「フィオナちゃん、目、覚めて良かった!」

「本当に良かった〜!このまま起きないんじゃないかと思ったよ〜!」

「縁起でもないこと言わないで下さい」



抱き合って喜ぶ无くんと與儀くん。

…心配かけちゃったみたいですね。



「ご心配をおかけしました。すみません」

「無事ならそれで良い。よく、花礫たちを守ったな、フィオナ」



…平門さんに頭を撫でられた…
新鮮でちょっと嬉しいです。



「フィオナ、無茶はしないで。私たちもいるんだから。……でも、本当に無事で良かった…」

「ありがとうございます、ツクモちゃん」



みんなに心配かけちゃいました。


でも、一人だけまだ私に声をかけてきてくれません。
入口の扉の所で壁に背を預け、こちらを向いてもくれない…



「………」

「………さて、フィオナも目を覚ましたことだ。俺たちは出てくぞ。まだ安静にさせてやるのが一番だからな」

「あ〜、そうだよね。フィオナちゃん!ゆっくり休んで早く治してね!」

「治ったら、また遊ぼうね!」

「それじゃフィオナ、また来るわね」

「はい、ありがとうございます、皆さん。…平門さんも、気をきかせてくれて」

「…ふ、高くつくぞ」

「それなりの価値はあると思ってますから。安いものです」



平門さんはまた私の頭を撫でるとみんなを連れて部屋を出ていった。

……ただ一人、花礫くんだけを残して。
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