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□我ながら完璧な舞台設定
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「花礫、花礫」
「あ?なんだよ?」
「與儀がフィオナちゃんの後ろに隠れてるよ?」
「……っ!」
无の言葉に與儀たちに視線を向けた。
ふむ。
確かに與儀がフィオナの肩に手を乗せて盾にするように歩いているな。
怯える與儀とは対称的に、フィオナは落ち着いて…………いや、落ち着いていないな。
あの顔は緊張している。
與儀が密着するほど近くにいるからだろうが…
與儀に惹かれる理由が分からないな。
フィオナに惹かれる理由は分かるが。
「は、早く帰りたい…」
「そ、そそ、そうだね…っ」
「ごめんね、フィオナちゃん…俺こんなに頼りなくて…」
「た、頼りなくなんてない!誰でも苦手なものはあるし、仕方ないよ!與儀、大丈夫だから頑張って!」
「うん…。ありがとう、フィオナちゃん…」
「與儀、フィオナちゃんによしよしされてる…」
「…………っ、仕方ないで済むか!!いくら怖ぇからって女を盾にしてんなよ!後ろに隠れてんじゃねぇよ!!つーか何慰められてんだよ!普通逆だろうが!!」
「花礫!タヌキさん苛めないでー!」
もどかしさとイライラからか、花礫は近くにいた狸を捕まえて締め上げている。
そんなにイラつくのならついてこなければ良いものを…
ツクモと无で花礫を止めていると、花礫の腕から狸が逃げ出し、與儀たちの所に飛び出した。そして與儀の足元を抜けて森の中へと消えて行った。
まぁ、勿論。何かが足元を通って與儀が平然としていられる訳もない。
再び與儀の悲鳴が響き渡った。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「…なっ!!」
恐怖の余り、與儀は後ろからフィオナに抱きついた。
普段なら抱き締めるなんて行為はしないだろう。フィオナも突然のことに顔が真っ赤だ。