short
□HAPPY BIRTHDAY
1ページ/2ページ
今日は俺の誕生日。
俺の彼女の悠花とは部活後にデートしにいく予定だ。
何よりそれが楽しみで。
朝から落ち着かなかった。
危うくチャリヤカーで他の自転車とぶつかりそうになって、真ちゃんには「気を引き締めるのだよ高尾」とお説教をくらった。
今日の朝練は無かったから、俺は急いで悠花の席へと向かった。
俺たちが付き合ってるのは学校公認と言っていい程だった。
なのに…
…避けられた。
本人はバレていないと思っているようだが分かる。確実に避けた。
変に近付いてこれ以上気を悪くさせたくはない。そうこうしているうちに担任が入ってきて授業は始まった。
俺と悠花は席が斜めで、いつもやたら喋っている。俺は後ろだから悠花の寝顔だって見える。
それなのに。
今日はなぜか喋りもしなければ寝もしなかった。
一体何をしたというのか。
分からなかった。
そのせいか、部活の昼練も放課後練もすこぶる調子が悪かった。
「高尾、集中するのだよ」
「真ちゃん…」
「何があったのだ。話は後で聞こう。とりあえず今日の蠍座のラッキーアイテムは傘なのだよ」
真ちゃんが他の人のラッキーアイテムまで覚えてるなんて珍しい。俺は礼を言っただけなのに
「気分なのだよ」と願ってもいないツンが返ってきた。
部活が終わった。
約束の時間になって悠花は下足室に来なかった。
ふと前を見ると、初冬の空に雨が降り始めていた。
「ラッキー…ねぇ」
外に出てゆっくりと歩き出す。
前から誰か走ってくる。
紛れもない、それは俺の最愛の彼女悠花のびしょ濡れの姿であった。
「…ったく。」
彼女は笑顔で言う。
お誕生日おめでとう。
びっくりした?
…んなわけないじゃん。
俺は余裕ぶる。
彼女は表情を曇らせて言う。
今からの時間、たっぷり私と楽しんでもらうためだったと。
「じゃあ思う存分楽しませてもらうとするか!覚悟しなよ?」
幸せそうな2人の手には1つの傘が握られていた。