いろいろ

□ACE
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島に停泊してからというもの
自室と食堂を行き来するだけで――

甲板にすら出てくる事が無くなった
紅葉を船内の廊下で見付けて
その手首を掴むと、引き摺るように歩く


階段だけはそういう訳にもいかず
小脇に抱えるようにして
無理やり連れて来た甲板で…

『寒い!!』

「…まぁ、少しな」

『少しじゃない!死にそうだから!!』


寒い、死ぬ、以外―――…
言ってないんじゃないのか?!って
紅葉に苦笑いを浮かべて

「寒さで死ねるか?」

って言い返すのも、もう何度目か?

正直、言ってる筈の俺も解んねえ。


確かに此処は冬島だ、雪も降ってるし
島を見れば一面に降り積もった雪がある
”寒くない!”と言えば嘘になるだろう

でも、紅葉が言うように
死ぬ程寒いっと言う訳じゃない。


「ひィ、よわ〜あぁ!?!」

『…流石、人間行火―――
上半身裸なんて馬鹿な格好してるのに
やっぱり温かいんだね?』

「紅葉!!お前、手冷てえ!」

『当たり前でしょ?!
だから、寒いって言ってるじゃん!!』


俺が手首を掴んでる方とは逆の手…
左手で鳩尾の辺りを触られて
そのあまりの冷たさに、
すっとんきょうな声を出しちまった

『少しはあたしな気持ちが解った?
もう部屋に戻ってもいいよね?』


「――まった…!!」

『何よ、まだ何かあるの?!』


「こーすりゃ満足か?」


自室に戻ろうと、背中を向けて歩き出す
紅葉を呼び止めて…
振り向くよりも先に抱き締める

小さい、小さいと思ってた紅葉は
やっぱり小さくて、抱き締めると
俺の胸元くらいまでしかない。
それ程小さい紅葉の肩に俺が
アゴを乗せるのは、かなりキツイ体勢になる

――けど、何とか乗せて至近距離から
紅葉を覗き込む


『…確かに温かいけどね?』

「けど、何だよ?」


×××…
((コレで街を歩く事は出来ないでしょ?))
((―――あっ、))

 

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