KID

□うつつのあいま☆
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糞みたいな此処で唯一と言ってもいい”気に入り”の屋上で寝入ってたらふと風に混じって
俺のじゃないメンソールの煙草の匂いと、つんと鼻を刺すシンナー(みたいな)匂いがして眉間にぐっと力が入る

『――…ぅっし、綺麗に出来た!』

差し込んでくる朝日に無理やり覚醒を促される様な――――そんな不快感がふつふつと沸いてくる意識の中
聞こえてきた聞き覚えの無い女の声に酷く重たく感じる瞼を抉じ開けると
八重歯の辺りで煙草を銜えて満足気に笑う女の首元がどアップで見えて………

『それにしても、よく寝てるな〜』

間延びした感心めいた言葉を呟く女は俺が起きてる事に気付いてない、とんだ”間抜け”だ。

「……誰だ、てめぇ?」

『あ、起きた?』

「起こすつもりがねぇんなら、俺の前で”独り言”は言うんじゃねぇ」

『ゴメン。ひょっとして初めから起きてた??』

「……「綺麗に出来た」辺りからな。んで、てめぇは誰だ?」

『わたしは千鶴!ちなみに『綺麗に出来た!』って言うのはマニキュアね?』

にかっと笑った女はそう言って俺を指差して、銜えてた煙草を指に挟むと吸い込んだ煙を上に向かって吹き出した

―――その指先は確かに赤い色が塗られてるし”綺麗”に塗られてる様にも見えるが……
煙草を挟む右手はまっさらなままで「完成してる」とは言えない中途半端な出来に何をそんなに満足してたのか?
理解不能な感覚に更に眉間のシワを増やせば、するりと指を絡め取られて腕が持ち上げられる

『……赤は好き?』

「…嫌いじゃねぇ」

『ふふ、だと思った!そうじゃなきゃ髪の毛赤くしたりしないもんね?』

短くなった煙草を捨てた手が俺の髪に指を通して染めすぎとワックスでごわつく髪を何度も突っ掛かりながら撫でる
どうやら俺はまだ寝惚けてるらしい。普段なら女に”好きに触らせる”事の無い髪を弄られてるのに
怒鳴るどころか、その手を払い除ける事もしないなんて……そうとでも思わなけりゃ俺自身どうかしてるって事になる。

『ほら見て、綺麗に塗れてるでしょう?』

「ぁあ゛?!……左手にしか塗ってねぇだろうが?」

『うん?―――あーぁ、これは気にしないで!お試しってゆうか、気の迷いみたいなものだから』


彩られてたのは、……俺の爪

「………こりゃ、一体何のマネだ?!」
『やっぱり似合う人が塗ると映えるよね!わたしには似合わなかったのにキッドには赤が似合うね!』

目が覚めたら突然目の前に居た女にも、そいつに名前を呼ばれた事よりも、寝てる間に勝手に塗った繰られたマニキュアよりも
俺には「赤が似合う」と言って笑った顔に何よりもハッとさせられたなんて―――俺は”どうかしてる”

「ハッ、………てめぇは変な女だな?―――でも、気に入ったぜ千鶴」
『改心の出来を気に入ってもらえて良かった』
「馬鹿か。俺が気に入ったったのは爪の色なんかじゃねぇよ!お前を「気に入った」って言ったんだ」




…………)atogaki(…………
なんだろうこれは…多分”学パロ”ですよね??
キッドで学生ものの連載を書こうとして断念した”お蔵入り”没作品をちょっと弄った結果がこれです。

勿体無いと思ってので載せてみたのですが、消すかもしれません。
 
 

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