KID

□サイレント☆
1ページ/1ページ


校舎の裏手に面した廊下の窓辺にずらりと並ぶロッカー、腰程の高さしかない其処は
”乗れ!”と言わんばかりに丁度いい高さで
其処に座って外を眺めるのが日課と云えば日課だった。

何とは無しに眼下に視線を向ければ、古びた駐輪場があり…数台の自転車に紛れて
今朝自分で停めたバイクが目に付く―――そしてその側に見掛けた事の無い女が1人

興味深気にじろじろと人のバイクを見てる。その手は触りたそうに伸びては寸前で止まる

「……そんなに触りてェなら、さっさと触ればいいだろうが!」

窓を開け放ちおそらくは落下防止だろうポールに頬杖を突いて思わずぼやいた言葉の
らしからぬさに―チッ…!!―と強く舌打ちを鳴らす

この場にキラー達が居なかった事が幸いと寸秒反らしていた視線を戻す。

此方を見上げていた双眼と目があったのはその時だ――――
まさかさっきの舌打ちが聞こえていた訳でもないだろうに女は真っ直ぐに此方を見ている
偶然(…それにしちゃァ、タイミングが良過ぎる)何かモノ言いた気な視線を真っ向から受けてやれば

徐にバイクを指差し首を傾げる
(ぁあ、そいつは俺んだ)

何でそう思ったのか解らねェが”これはお前のか?”と聞かれた気がして黙ったまま頷いて返した

途端に慌て出した女はオロオロといった様子で勢い良く頭を下げたかと思うと
指を差していた手を広げて、バイクへと腕を伸ばす。勿論触る事はしないがその仕草を見れば
女が何を思っているかは手に取るように解る……

(謝罪の次はお強請りかよ?)


「―――はっ……、上等だ!」

何時からか緩んでいた頬を覆い隠していた手を解き、(其処で待ってろ。)と無言の指示を与える。

大袈裟過ぎる仕草で首を傾げた女はたっぷりと時間を要した後に何やら思い当たった様子で
その場に両膝を抱えて座り込み、合ってるか?と問うように何度目かの首を傾げた

何1つとして言葉にしていない指示の1つ、1つを正確に汲み取る女に
降って沸いた興味は俺すら気付かない早さで膨れ上がり―――気付いたときには欲してた…

其処で待ってろ!

(キラー、後で俺の鞄届けろ)
(フケるのかキッド?…最短記録だな。)
(ぁあ。面白ェもん見付けたからな!)
(解った、あいつ等には俺から言っておく。夕方に届けよう)

 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ