KID

□血溜りの華
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何だか様子のおかしい船があるんだが…

そう言って呼びに来たキラーと共に
甲板に出て来てみれば右舷前方に見える
その船は確かに様子がおかしい。


帆に書かれたマークに見覚えは無いし
放って置く事だって出来たのだが
ほんの少しとはいえ一度気になった物を
そのまま見過ごして行くのも後味が悪い。

様子を見るのに近付いて交戦にでもなれば
少しはこの持て余した退屈も紛れる
そう考えて船を横付けし船縁に飛び移ると


其処は血の海で、噎せ返る程の臭いが
充満する生々しい戦場の痕が
甲板一面に広がっていた――――



「―――…いっそ清々しいくらい
派手にやったな?」


ごろごろと死体の転がってる甲板の
ほぼ中央に仰向けで横たわってる奴に
そう声を掛ければゆっくりとした動作で
首だけを此方に向けたそいつは
重たく閉ざしていた瞼を持ち上げて…

虚ろな目でどうにか俺を見上げてくる。

『綺麗、な赤い色ね??』


「お前も赤いだろうが」

『そうだけど、これは血だもの…もうすぐ
くすんで黒に近い色になるわ。
だから貴方の赤には到底勝てっこないのよ』


それに…、っと言葉を続けたその女は
嘲笑めいた乾いた笑みを浮かべて

この血は其処らに転がってる野蛮な男達の
血だから綺麗なんて呼べる代物じゃない
っとそう言って心底嫌そうに息を吐いた

「…その口振りだと、こいつらの
仲間だったって訳じゃなさそうだな?」


『海賊旗をかかげただけの馬鹿の集まり。
こんな奴らの仲間だなんて御免だわ!!』


その言葉を聞いて一瞬眉間に力が入ったが
次の瞬間にはそれもすぐに消え去って…

『海賊っていうのは自由で信念と誇り
それから野望を持ってる者でしょう??
海賊旗を隠れ蓑に人拐いをしてる
こいつらが名乗ってるのはおかしいのよ』

「…それじゃ、まるで海賊が好きだって
そう言ってるように聞こえるな?」


『えぇ、好きよ??本物の海賊なら』

打って変わって婉然っと浮かべた笑顔で
続け様に”カッコいい”とそう断言した女に
隠し切れない驚きを持って数歩近付く

「海賊がカッコいい?!…そんな事言う奴
今まで一人も見た事ねぇよ。」

『…そう?だったらそれは、よっぽど
見る目の無い人達だったのね』


「―――俺も、海賊だがな…」

『知っているわ。キッド海賊団の
ユースタス・”キャプテン”・キッドでしょう?
貴方の手配書を見て会いたいと思っていたの』


「へー…ぇ――お前、名前は何てぇんだ?」


『千鶴』


×××…
((俺の船に乗るか…千鶴??))
((……それは、すごく光栄なお誘いね))

 

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