KID

□赤い赤
1ページ/1ページ


それ程大きくはない、小ぶりの秋島に
広がる広大な森は鬱蒼と茂り
風が吹く度にヒラヒラと葉を舞わせる。

真っ赤な絨毯に横たわり目を瞑った
千鶴を見付けた時、何でか…俺は


敷き詰められた赤い葉が…
体に降り積もった赤い葉が…血に見えた
血溜まりに千鶴が横たわってる
そんな錯覚はいつまでも消えずに
今も、頭の隅にぼんやりと残ってる。

「……綺麗だな。」

駆け寄るでも無く、呼び掛けるでも無い

独り言のように発していた言葉に
嘲笑のようなため息を吐いて
千鶴の傍へゆっくりと向かう――…



「何してやがるんだ?」


『ぅ――うん…??』

「船で待っていろと言っただろ?
こんな所で一体何してやがるんだ??」

横たわったまま目を開けるでも無く
ただ、ボー…っとして
返事というよりは寝言のようなそれに
小さくイライラと舌打ちをして
横たわる千鶴の頭元に座った


それが解ったのか、無意識なのか??

両腕を伸ばして俺の足に擦り寄るように
頭を乗せると、ゴロゴロ頬擦りする


「聞いてやがるのか?」

『うー…ん』

「寝ぼけてやがるな。」

『おきてますよーぅ』

「だったら、俺の質問に答えろ」

言ってる側からアクビをし出す
千鶴の頭に手をやり
そっと撫でてやれば、フニャリと笑う

『退屈だったから、散歩してたの』

「ぁあ…、あー」

『そして此処を見付けて』

「んっで、昼寝してたのか?」


『あんまり綺麗だったから
寝そべって、風に舞って降って来る
紅葉を見てたらいつの間にか、よ!』


「どう違うってんだよ?
寝てやがった事に変わりはねーえだろ」

『そうだけど…、――あ!!』

「んぁ??」

『キッドも綺麗だって思ったでしょう?
さっき、そう言ってたもんね!!』


口を突いて出た”独り言”を
聞いてやがったのか?!っと舌打ちする


「安心しろ幻聴だ」

『幻聴?!』


×××…
((ってゆーか、”安心しろ”ってなに?!
キッド私に何か隠してる??))
((別に何でもねーえよ。そんな事より
この森を東に抜けた所に町があったぞ))
((やったーぁ、ショッピングだ!!))

―――単純なヤツでよかった…。

 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ