MARCO

□スクール・ハイ・LOVE☆
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締め切ったカーテンの向こうが赤々と染め上がった頃、没頭してた作業から頭を擡げる
ホームルームが終わってから職員室にも帰らずに熟した採点は
残り数冊のノートを残すだけとなったいて……

(どうせなら全部終わった時に気付きたかった)

っと遣り切れないため息を吐き捨てて、引き出しの中から探り当てた箱から
取り出した1本の煙草を銜えて一服しようとしたその時

「……時から、ずっと好きだった――付き合って欲しい!!」

上擦った声が窓の外から聞こえてきた―――男子生徒の声に聞き覚えは無い。

「返事っ、今…此処で聞かせてくれないか?」

聞いてるこっちまで切羽詰ってくる様な声に苦笑いを1つ溢して
手の平で弄んでたライターの火を点ける、吐き出した紫煙がくゆるのをぼんやり見ながら
自分にも覚えのある青臭いBGMに出来る限り耳に蓋をするべく新しくノートに手を伸ばす

使用ページの最後を開いた手が止まる。黒で埋め尽くされた其処に目立つ赤い文字

”I’ LOVE You!!”小さなheartを挟んでご丁寧にも--Marco--と俺の名前入りとくれば
こんなノートの隅の落書きに下心抜きで愛しさが沸いてくる

(さてさて、この可愛い悪戯をしてくれたのは…一体誰なのか??)

表紙が表に来るようにノートを閉じて名前を確認する………

『ゴメン。』

此処に来て初めて聞こえてきた女子生徒の声に煙草を挟む手がぴくりと動く
聞き覚えのある声と今目にしてる名前の人物がリンクする

「っ…そっか、佐久良さんは誰か好きなヤツ居るの?」

――――聞き覚えの無い男子生徒の声で決定打を打たれた思考は霞む。
無意識に開いてたノートの赤い文字だけが鮮明に映し出されて
口の中で声にならない言葉が幾度もそれを読み上げていく

『居るよ。あたしは…貴方みたいに直接言う勇気が無かったからメッセージだったけど、
今はその人からの返事を待ってるの。』

「はは、いいなー…そいつ。羨ましいよ」

『どうかな?今頃「迷惑だ」って思ってるかも』


第三者の立場から、本人の口によって明かされた本音の言葉で不覚にも胸を鷲掴まれた
知らずに詰めていた息に気付いたのは長くなった灰が机に落ちたのを見た時…。

「………参った。」

男子生徒が立ち去るのを待って開けたカーテンの向こう窓越しに
艶然と微笑む”佐久良雛姫”と目が合って、口唇を動かさずにぼやいた言葉は誰にも聞かれる事無く
窓を開ける音に紛れて掻き消えた

「此処を選んだのは、わざとかい?」

『さぁて、どうなんでしょう??』

まだまだ餓鬼だと思っていた生徒のしてやったりな顔に
「末恐ろしいねい…」と内心ごちってふるりと小さく首を振った。

『ねぇ、あたしのノート見てくれた??』

「答えの解ってる質問をするなよい」

『じゃぁ、答えの判らない質問をする事にする!――返事を聞かせて?』

「……そうだねい、それなら答えてやってもいいよい」

…でも、遣られっぱなしは性に合わない。

(本当っ?!教えて!!)
(後、半年――その間に気持ちが変わらなかっ)
(絶対変わらない!)
(くくっ…、それじゃァ半年後に今度は直接言いに来いよい?)
(う゛…わ、解った、約束だからね!!)
(よいよい)

 

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