MARCOU

□凛とした眼差し
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「――――さてと、お前さんはこれからどうしたい?」

『どう…って??』

「お前さんをヒューマンショップに売っ払おうとしてた奴等は俺が打ちのめした」

『あっという間、でしたね』

「腹ごなしにもなりゃしねェ雑魚だったよい。」

『強いんですね?』

「此奴等と比較されんのは面白くねェない。打ちのめしたのは此奴が気に食わなかっただけだが、済んだからといってこのまま放っぽって行くような甲斐性無しじゃねーェつもりだ」

『……―――それで「どうしたい?」って聞いたんですね』

「あぁ。っとは言っても限度はあるし、俺が勝手にしてやれる事は少ないんだが…」

『それなら、わたしが連れて行かれるはずだったヒューマンショップに連れて行ってください』

にこりとはかなげに微笑んだ女は真っ直ぐと俺の目を見上げて頭を垂れる。その仕草は凛としていて嘘や偽りは無い

別に正義の味方じゃない。聖人君子を気取るつもりも無ければ他人に説教が出来るほど出来た人間でも無いが
たった今助けたばかりの地獄へ自ら赴きたいと願う心境が理解出来ずに眉根を寄せて女を見遣る……

「……何だってそんな場所へ行きてェんだ?」

『わたしが知る限りの”行くべき場所”だから、ですかね?』

「どうゆう事だい?」

『わたしには帰る家も家族も居ません。正確には判らないっと言った方がいいかもしれません』

「――…そいつぁ、つまり記憶が無いって事か?」

俺の問いに小さく頷いた女は、ぽつりぽつりと記憶の糸を手繰るように話し出し、俺はただそれを聞いて時折頷くだけ
女の記憶の始まりは下卑た海賊船から始まりそっから先は戦利品と同等―いや、それ以下―の扱いで海賊船を転々としていたらしい
それより前の記憶はまるで無く唯一知ってる名前を呼ばれる事だけが存在の証明だったと微笑む

『―――どんなに酷い扱いをされようと死にたいとは思わない。わたしは名前を呼ばれるだけで構わないんです』

「だからヒューマンショップに行きてェのかよい?」

『はい。わたしは名前を呼ばれて生きていたい』

「それと引き換えに人間である事を否定されてもか?」

『構いません。元よりわたしは人間じゃないですから』

ふわりと持ち上げられた腕がみるみる内にその形を変えて手枷がガチャリと地面に落ちた

「…―――悪魔の実の能力者だったのかい。」

『何の実かは知りません。ひょっとしたらこの能力が原因で捨てられたのかもしれません』

「なぁよい、1つ聞くがお前さんをオークションで落札する相手が俺でも構わねーェかい?」

『貴方が、わたしを買ってくれるんですか?』

「そうすりゃぁ、ヒューマンショップに行く手間も省けるだろい?勿論金は払う」

『払うって、誰にですか??』

「お前さんにだよい!」

『わたし、お金なんていりません』

「1度海に出たらそうそう次の島にはたどり着かないからねい―――みすぼらしい格好の女を連れて歩く趣味は無ェんだ!」

きみを連れていく

『……優しい人。』
「勘違いしてるみたいだが俺ぁ、海賊だよい?」
『知ってます、さっき”不死鳥マルコ”だって言っていたのを聞いてましたから。』
「そうかい。―――だったら、何だって……そんな」
『だって、どれも”わたしの為”な気がするんです。自意識過剰かもしれませんが』
「自意識過剰かは解らねーェが、買い被りだよい」




…………)atogaki(…………
どんんなツライ状況にあってもめげない女の子を書こうと思ったら、とんでもない事になってしまいました...
長編として考えていた話しだったんですがダーク過ぎて迷っているネタだったりします(笑)

 

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