MARCOU

□お姫様と賭け事
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「さてと、晩飯も食ったしコーヒーも飲んだんだそろそろ行くよい?」

『ちょっと待って、行くっていったい何処に?』

「風呂だよい!ゆっくり湯船に浸かって汗を流したいって言ったのは雛姫だろい?」

「風呂もマルコが入れてやってんのか?」

『何バカな事言ってんの、そんな訳無いでしょう!』

「俺はそれでもいいって言ったんだけどねい断られたよい。」

『あたりまえで、ぅわっ…ぁ!?』

「エマには飯食い終わったら行くって言ってあるんださっさと行くよい!エースはそれ食ったら書類仕上げちまえよ!!」

人一倍早く食堂に来てるくせして人一倍長く居座る大食らい常習犯のエースに呆れながらそう声を掛ければ
おう!っと元気な返事が返して寄越される。これが本当ならいいんだが元気であればある程に本当に解ったのか?と思える

「―――今日も出来なかったら明日からおやつは抜きにするからねい!」

「げぇーっ!!そりゃねーぇだろマルコ!」

「それが嫌ならさっさと仕上げちまえばいいんだよい。1週間あった期限を3日も無駄に延長してんだ楽勝だろい!」

両腕で抱き上げた雛姫を片腕で抱えて空けた左手でエースの被るテンガロンハットの上から押し付けるように頭を撫で付け
食堂を出ると薄暗い船内の廊下を歩きながら雛姫を両腕に抱え直してナース達が共同で使ってる部屋に向かう
その道すがらクルー達と擦れ違う度に恥ずかしそうに俯く雛姫に握られてシワになったシャツの身頃に笑みを溢せば反抗的な視線が向けられた

「いい加減慣れたらどうなんだい?俺に世話されるようになってからそれなりに日が経ってるんだから」

『……マルコには解んないわよ!移動の度にいちいち抱っこせれるわたしの気持ちなんて』

「そうだねい。端っから俺に任せとけばドクターの診断通り5日で治った物を無理するから悪化したんだよい」

『そうだけど!恥ずかしいじゃない、小さな子供じゃないんだから………』

見ず知らずの島の子供が手放した風船を追って足元の段差に気付かずに転んだ時、船に戻るまでの道のり
極力安静してろと言ったドクターの言葉を無視して、すぐそこだからとちょこちょこ歩き回ってた時
そのどれの時も傍に居て無理するなと忠告してた俺の言葉を散々無視した結果がこれなのだから”自業自得”なのだ
俺としては少々役得だとも思う事もあったりするが男の性なのだからこればかりは仕方が無いと自嘲する。

『―――こんな事になるなら、初めから賭けになんて乗るんじゃなかった。』

「無理に動かさない方がいい、と言った俺の言葉を最初に無視するのが悪いんだよい!」

『あの時は大丈夫だと思ったんだもん!腫れも少なかったし』

「素人目で判断するから痛い目にあうんだ」

『マルコだって素人じゃない!お医者さんじゃないんだから』

「自分の知識不足を人の所為にすんなよい。」

『なっ、』

「グララララララ!!いつまでそんなとこで言い合いしてやがる、さっさと入って来やがれ夫婦喧嘩は犬も食わねぇぞ!」

「そうですよ。それにわざわざ此方まで来なくてもフランもソフィーも部屋に居ましたでしょうに」

「どうしても親父に今話したい事があるってきかなくてねい」

「俺に話し――言ってみろ、他ならぬ娘の話しならどんな事でも聞いてやらぁ!」

『車椅子買って!!すぐに治るだろうからいらないと思ってたけど、』

もう、ダメ

『移動手段が”抱っこ”なんて恥ずかし過ぎる!!』
「そんな事ならすぐにでも用意してやる!―――と言いてぇところだが、そればかりは俺にも叶えてやれねーぇな」
『どうして!?』
「ドクターから釘刺されてんだろーよい!」
『…………ドクターから??』
「ごめんなさいね。車椅子だと治りが遅くなるだろうからって」
『ドクターが?!』
「そうだろうねい。雛姫の事だ、少しならいいだろうと歩き回るのが目に見えてるよい!」
「そうゆう訳だから諦めろ。完治するまではマルコを扱き使ってやりゃぁいい!!」
『そ、そんなーぁ……、ドクターのバカーーー!!皆過保護過ぎるのよたかが打撲じゃない!』




…………)omake(…………
「―――やっぱり無理だよい、俺が医務室まで運んでやるからt」
『大丈夫だってば!これくらいたいした事ないよ!!』
「今無理すれば治りがそれだけ遅くなるんだよい?」
『マルコは過保護なんだから、平気よただの捻挫だろうからどうって事ないったら』
「やれやれ強情なお姫様だよい。そんなら1つ賭けでもするかい?ドクターがなんて診断するか」
『いいわ!わたしが勝ったらマルコの秘蔵のお酒貰うからね?』
「そんなら俺は、全治1週間の打撲ってのにしようかねい?」
『わたしは何を賭ければいいの?』
「そいつは後で考えるよい。無理難題押し付ける気は無いから安心しろい」

 

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