BOOK
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『ぅおっし、今日も頑張ろう』
2009年9月
まだ暑い日が続く今日この頃。
今年始めにゴールデンボンバーのアシスタントマネージャーになった私はPV撮影の打ち合わせのための資料を準備してメンバーの待つ部屋に向かう。
打ち合わせをそこでするみたいだから片付けておこうと少し急ぎあしで楽屋へ向かう。
さっき楽屋入りしたばっかりだし汚くはないはず。そんな淡い期待を抱いてドアを開けた。
『皆さんおはようございまー…えぇっ!?』
メンバー入りする前とは全く違った光景が目の前に広がっていた。この短時間で何が…
鬼「あ、■■ちゃんおはよう」
喜「はよー■■」
歌「おはよう、■■ちゃん」
樽「■■ちゃんおはようねー」
『おはようですけど何ですかこの部屋!』
鬼「あれ、部屋間違えた?ここって言われたんだけどな」
『そうじゃなくて!なんでこんな汚くなってんですか!ここ打ち合わせにつかうんですよ!今私が部屋あけたの5分弱ですよね?』
喜「しゃーないだろ、持ってきたはずの携帯なくなったんだから」
歌「もうきゃんさんどこに置いたのー」
鬼「さっきいじってたよね、」
樽「あれ、■■ちゃん。俺のズボン知らんと?」
なんでこんなにゴーイングマイウェイなんだろうか。今までアシスタントマネージャーとしてやってきて何度思ったことだろう。まあ慣れたといえばもう慣れた。うん、慣れってこわい。
『携帯ならさっき部屋の前に落ちてましたよ。はい、きゃんさんもう落とさないでくださいね〜』
喜「あった!悪ぃな■■、さんきゅ」
樽「■■ちゃん俺のズボン…」
『あー…よいしょ。これじゃないですか、だるびしゅさん。』
鞄の下敷きにされていたスウェットを引き出した。
樽「おお!ありがとうね、■■ちゃん!あぁパンツのまま打ち合わせしなきゃならんとこだったよ〜」
『なんでズボンを脱いだかは知りませんけどもとりあえずむやみやたらに脱がないでくださいね、』
樽「んー、考えとこうかね」
うん、今日も朝から強烈だ。まあこの強烈さに時間帯なんて関係ないけども。
『ってあと10分で打ち合わせですよ。ここ使うんだから早く片付けてくださーい』
鬼「え!そうなの?聞いてないよー」
『さっき言ったじゃないですか!ほら、タミT落ちてますよ。汚れちゃうからしまってください。このカーディガンは誰のですか?え、これ可愛い。』
歌「あ、それ僕の。可愛いでしょ?」
『おぉ!やっぱりうたひろさんセンスいいんですねぇ。見習おう』
歌「今度また買い物行こうよ!」
『いいんですか?やった!』
うたひろさんとはよくいっしょに買い物に行く。行くというより着いていって洋服を選んでもらう。可愛いものが売っているお店をたくさん知っていて友達と行くよりためになるし楽しい気がする。
樽「えー、■■ちゃんと俺も買い物いきたかよ」
『あそろそろ白塗り買いに行かなきゃですもんね!あと腱鞘炎用の湿布も』
樽「俺もじゅんくんみたいな買い物したか...」
そんな時楽屋のドアがコンコンとノックされる。やばいもう来てしまったのかと慌ててドアを開けた。
『はい!あ、所さん!すいません、まだ片付け終わってなくて…』
所「資料は?準備出来た?」
『はい、大丈夫です。全部持ってきました!』
所「じゃあ私は案内してくるから戻ってくる前にもう少し片付けておいて」
そう言って所さんは部屋を出ていった。外に出てここへ来るまでだからだいたい五分か。
『よし!さっさと片付けちゃいましょう!』
鬼「…ねぇきゃんさん、きゃんさん」
喜「ん?」
鬼「今日■■ちゃんいつにも増して気合い入ってるよね。なんかあったの?」
喜「■■?あぁなんか今回の撮影からちゃんと役割あてられるんだって。だからじゃね?今まで所さん手伝いだけだったし」
鬼「へえ、そうなんだ」
***
あれから所さんがプロデューサーさん達を呼んできて打ち合わせが始まった。さっきまでぐだぐだしていたメンバーもうって変わって真剣な表情で臨んでいた。私も気を引き締めなきゃ、
所「今回からうちのアシスタントマネージャーも本格的に参加しますのでお願いしますね」
所さんから紹介されて立って一礼して軽く挨拶した。みんな微笑んでお辞儀を返してくれる。よかったとほっとして席に座ると鬼龍院さんと目があってにこりと微笑んでくれた。鬼龍院さんの優しさが身に染みてなんだか気恥ずかしくなってしたを向いた。そのあと少し眠そうなだるびしゅさんとも目があって微笑み…というよりニヤリという音が合うだろう笑顔を向けられたけどまああれも微笑みと解釈しよう。
***
プ「ではここはセットを使うということで。」
話し合いが進んでプロデューサーさんが話をまとめた。あれ、なんかさっき確認したのと違う気がする。心配になってメモを見返してもやっぱり違っていた。明らかに違うのに、多分誰も言い出さないのは相手がちょっと有名なプロデューサーさんだからで。
たしかに言いにくいけれどおかしいことはおかしいって言わなくちゃ。今意見を言えるのは多分私だけ。なにか言われたら有名なプロデューサーだってことは知らなかったってことにしよう。実際あんまり知らないし!
プ「じゃあ今日は『あの…』なんですか、アシスタントさん」
全員の視線が私に集まる。うわぁ怖い。言いにくい。けどもう声をかけてしまったんだし、よし。当たって砕けるまで!
『それってセットじゃなくて実際に道路を通行止めにして撮ると聞いていたのですが…』
睨まれてる、睨まれてる。
するとプロデューサーさんとは違う人にそうするためには沢山の人を要するからやめるべきだと言われた。
カチンと。カチンとくるとはこういうことを言うのだろう。打ち合わせが始まる前に通行止めにすべきだと言っていたのはこの人で。言ったのはお前だろうと言ってやりたい気持ちにかられたがかろうじて押さえた。鬼龍院さん達に迷惑はかけられない。
プ「アシスタントさんはどう思うかね、」
『え、私ですか。私は…』
ええい!もうどうにでもなれ、負けるな私!
『私は通行止めをしても路上で撮影すべきだと思います。たしかに沢山の人を要しますが…プロモーションビデオと言うのはアーティストの意見を最優先して考えるべきだと思います。そのために人が足りないなら私が周辺住民の方々全員から快諾を頂けるように頼んでまわります。』
「…。」
沈黙。視線が痛い。でも出来ることはやったし悔いはない。…いや、あるっちゃあるけど。
プ「君はアシスタントマネージャーだったかね?」
『…はい、そうです』
だめだ。クビか!クビなのか、これは!