tennis*short
□俺にしなよ。
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クリスマスイブ。
街は恋人達で溢れ返っている。
私だって今日は彼氏と過ごす予定だった。
うん、予定だった。
それなのに急遽バイトになったとか言ってドタキャンされてしまったのだ。
なんで急にバイトになるわけ?
プレゼントも用意していてすごく楽しみだったのに。
既に待ち合わせの駅前に来ていたのに、私はトボトボと街を歩き始めた。
俯いて歩くのもいかにもフられた子に見えるだろうと周りをキョロキョロ見渡しながら歩いていたのが悪かった。
お気に入りのカフェを通りかかった時、見つけてしまったのだ。
彼氏と、腕を組んで幸せそうな顔をした私の知らない女。
私と違って可愛らしくて、いかにも彼氏のタイプの子だった。
見ちゃ駄目だ。
頭の中に警告音が鳴り響いている。
なのに目を逸らすことができない。
その場から動くこともできなかった。
ふとブーブーと振動が鳴った。
ポケットにあるスマホを取り出し通話ボタンを押す。
「やぁ、今何してる?」
「……幸村?」
「あれ?ディスプレイ確認してなかったの?」
幸村の声聞いたら何故だか涙が滲んできた。
「ゆきむらぁー…」
「え、泣いてる?」
「どうかしたの?今どこにいる?」
幸村が心配してくれているのに、涙が止まらないせいで答えることができなかった。
「そこにいろよ。」
プツンと切れた電話を握りしめたまま、私は言われた通りその場から動かなかった。