tennis*short

□忍足くんに守られる。
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「あんたいつまで忍足くんにつきまとってるのよ!?」


裏庭に呼び出されて、数人の女子に文句を言われる。

侑士と付き合うようになってから、よくあることだった。

最初はそれなりに傷ついたし辛かったけど…もう慣れた。

だから、このことを侑士には言っていない。

きっと、すごく自分を責めると思うから。


「聞いてんのかよッ!」


痛ッ。
突き飛ばされたし。

普段は文句を言われるだけで終わるのに。

痛い思いはしたくないな…。


「お前ら、人の彼女に何してくれとんのや。」


下を向いていたら聞き慣れた声がしたので、ハッと顔を上げた。

侑士―…

メガネの先の綺麗な瞳が、怒りで震えているのがわかる。


「次こないなことしたらな…俺、何するかわからへんで。」


侑士が低い声で言ったら、女達は慌てて逃げて行った。

とりあえず、ぶたれる前でよかった。

ホッとしていると、侑士が私の腕を痛いほどにつかんできた。


「なんでなん?さやかにとって、そんな俺は頼りない存在なんか!?」

「そういうわけじゃ…」

「そういうわけやろ。俺は好きな女1人守れない男とちゃうねん。もっと頼ってくれや。」



「…ごめんね。」


侑士があまりに辛そうな顔して言うものだから、とっさに出た言葉は謝罪だった。


「悪い。さやかに対して怒っとるんとちゃうんや。俺自身が、ホンマいらつくッ!」

「あのっ。私が侑士に言わなかったのが悪いから。また今回みたいなことがあったら、守ってくれますか?」

「当たり前や!」


ギュッと痛いほどに抱き締められて、侑士がどれだけ私を大事にしてくれてるのかわかった。

今までわかっていなかった自分を恨めしく思いつつ、この優しい腕にいつまでも包まれていたいと願った。


END
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