オ ト ナ リ*°

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今年のドイツは11月から雪が積もった。
朝、目を覚ますと庭一面が真っ白な雪景色に変わっていた。ビックリして飛び起きると、庭の窓をカラカラ開けた。一気に冷たい空気が部屋に入り込み全身を身震させた。
11月からこんなにも雪が降るなんて珍しいなと思った。ドイツにきて3年、毎年雪を見るのは12月の初めで、11月は降ってもこんなに積る事はなかった。

まったく有休を使ったりしない私を上司は信じられないという顔で見てきた。たまには有休使いなさい、といって今日という日をくれたのだが、特にする事もなく困っていた所だった。
ショッピングにでも行こうかと少し考えていたけれど、この雪を見てすぐにその考えは消えた。

雪が降ったのだからやる事は一つ。雪かきだ。このまま放っておくと、どんどん雪が積もって大変な事になる。降るたびに雪かきは必要だった。暖かいココアを作りながら、ふと、お隣さんはこんな雪の日でも練習をしているのか、大変だな。なんて考えていた。初めてシャルケの練習を見に行ってみたいと思った。正確には内田さんが来てから、何度か思った事はあったが本当に一瞬思うだけで実際に行こうとは思わなかった。
せっかく有休を取ったのだから、少しだけ覗いてすぐ帰ってこよう、そう決意するとクローゼットから手袋やマフラー、ニット帽などのあらゆる防寒着を出し準備を始めた。靴下は2枚重ねて履いた。


家を出るとさっそく近所の子供達がソリで楽しそうに遊んでいた。
雪の道をザクザク歩きながら、シャルケの練習場に到着すると、着く頃には鼻の先が赤くなっていた。雪が降ったにも関わらずたくさんの見学者がおり、シャルケ人気を改めて実感した。
その中に日本人の女の子も混ざっておりすぐに内田さんを見に来たんだろうな、と思った。
内田さんの日本での人気ぶりは知っていたが、ドイツまでわざわざ見に来るくらい本気で好きな人がこんなにもいるのかとビックリした。

選手は寒い中一生懸命練習に励んでいた。その中でも内田さんの姿は人一倍小柄で、すぐに見つける事ができた。シャルケの青いユニフォームがよく似合っていた。

ああ、いつもこんな風に練習しているのか。
たまに他の選手と戯れ合ったり、走り込みでキツそうな顔をしたり。
普段とはまったく違う内田さんの顔を見る事ができて新鮮だった。
と同時に、本当にプロのサッカー選手なんだなぁ、とぼんやり考えていた。
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