オ ト ナ リ*°
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次の日の朝、早速昨日越してきた噂の日本人サッカー選手、内田さんに玄関の前で会った。
というよりは二人同時に玄関から出てきたのだ。ああ、隣の部屋だったのか。とその時気付いた。確か前住んでたお隣さんは数ヶ月前に引っ越していた。
お互いに目が合い少し気まずい空気が流れたが、
すぐにそんな空気をジャージ姿の内田さんが吹き飛ばしてくれた。
「あ。ちょっと待っててください」
そう言うと内田さんは家に再び入りすぐに戻ってくると、私の前にズイッと真っ赤なトマトを差し出した。私の頭は?でいっぱいになり思わずなんですか?と素で聞いてしまった。
「昨日、袋から落としていきましたよ(笑)」
私の顔は渡されたトマトのように真っ赤になっていたと思う。
思わず「あはは」とまぬけな笑い方をして、そのトマトを見つめた。
そして昨日言えなかった事を言いたいと思った。
「この街は本当にいい人ばかりで、すごくのんびりした所です。きっと内田さんも気に入ると思います。なので何か困った事があったら何でも言ってください!」
言えた。
ホッとしてずっと手元のトマトを見ていた視線を内田さんに向けたら、
少し照れた笑顔で、ありがとうございます!頑張ります!と言ってくれた。
素直に笑顔が素敵な人だなと思った。
なんだかまた急に恥ずかしくなり、そのまま先にドアに鍵をかけて内田さんの隣を抜けた。
「トマトありがとうございました!」
そう伝えるとトマトをかばんにしまい小走りで保育園への道を向かった。
今日はいい事ありそう。そう思った。