進撃の巨人
□GAP
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「―…なあ、エレン。」
「なんですか?兵長。」
「お前は、名無しさんの事をどう思っている?」
「えっ?」
唐突な問いにエレンは動揺する。リヴァイの質問の意図は解らないが、とにかく当たり障りの無い返答を返す。
「とても優秀な兵士だと思います。」
「…最近やけにお前たちが一緒に居るのを見かけるが。」
「?…はい。」
「…いや、なんでもない。兵士としてでなく、個人としてだ。」
リヴァイはなかなか核心をつくような話し方をしない。
その回りくどい態度は、彼にしてはとても珍しいものだった。
エレンもその異様な空気に圧倒されて、たどたどしい喋りになる。
「え…と、個人としてですか?」
「ああ。」
「そうですね、名無しさんさんは…魅力的な人、ですかね。優しいし、歳上ですけど可愛いらしいし、表情もコロコロ変わって、なんだか引き込まれるって言うか…」
「…ッチ」
「な、なに怒ってるんですか兵長。」
「怒ってない。続けろ。」
(続けろったって…)
エレンは内心不満でいっぱいだ。
質問の意図はわからないし、
なぜか急に不機嫌になるし、
どう思ってるかなんて、急に言われたって、ペラペラ出てくるもんじゃない。
「あの…なんでそんなことを聞くんですか、兵長。」
「深い理由はねぇよ。」
「…でしたら、俺の思うことは以上です。」
リヴァイのつっけんどんな態度に、エレンは少しムッとして話を打ち切りにかかった。
間髪いれずに「失礼します。」と、軽く会釈して、その場を離れようと身を翻す。
「おい、…可愛いらしい、とは、アイツのどこを見てそう言ってんだ?」
「え…」
兵長、この話題にやけに食い下がるなぁ。
と、面倒に思いながらも、リヴァイの方に向き直る。上司の質問に答えないわけにはいかない。
「顔…とか、仕草…とか、」
「あとは?」
「…質問攻めですね。あ、こないだ野良犬に赤ちゃん言葉で話しかけてるのを見たときはなんか、こう、可愛いな…と。」
「ほう…」
「あと意外にも部屋にピンクの雑貨がチラホラあったり、あ、家族写真とか愛犬の写真とか飾ってるのを見たらなんだか素敵な人だなー、って……兵長?」
「あ?」
「恐い恐い恐い…目がヤバイですよ。なんでさっきから怒ってるんですか!」
「怒ってねぇよ。それより、なんでそんな詳しいんだ。アイツの部屋のこと。」
「たまたま用事があって寄ったんです。」
「…ほう、同じ班になって一月も経たない内に仲良くなるもんだな。」