進撃の巨人

□職権乱用
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近々壁外調査が予定されているらしい。

それまでの期間、リヴァイは班員達にそれぞれのスケジュールを任せていた。
必要な書類さえ提出すれば、休むもよし、鍛練するもよし、掃除に精を出すもよし。

そんな中、名無しさんだけは何故か雑用係りとしてリヴァイの部屋で拘束されていた。



「リヴァイ兵長、私もやりたい事があったりするんですが…?」

「どうせ軽く鍛練したらダラダラと一日過ごすだけだろうが。」

「違います!忙しいですもん!」

「…じゃあ、何をするつもりだ?」

「…っう…」



リヴァイに追求されると、名無しさんは言葉を詰まらせる。

読書したいだの、散歩したいだの、言っても「下らん」と却下されるのは目に見えているからだ。





「…っふん」

「鼻で笑わないで下さい兵長!」

「とにかく、雑用出るまで黙ってそこに座ってろ、お前は。」



リヴァイに言われ、名無しさんは渋々近くのイスに腰掛けた。







「…おい、名無しさん。」

「はい、なんでしょう。兵長。」

「紅茶を頼む。」

「はい、解りました。」










「…おい、名無しさん。」

「はい、なんでしょう。兵長。」

「肩が凝った。揉め。」

「…、解りました。」










「…おい、名無しさん。」

「はい、なんでしょう。兵長。」

「こっちへ来い。」

「…?…はい。」



理由は解らず言われた通りリヴァイの元へ駆け寄る。

目の前で立ち止まり次の言葉を待つが、一向に口を開く様子は無い。



「あのぅ、へいちょ…うわあっっ!?!?」



なんですか。と、小首を傾げた瞬間だった。
名無しさんは急に手首を引かれ、リヴァイの胸に、文字通り飛び込んでしまったのだ。



「…ち、へ…へい、ちょ…??///」

「…あ?」

「なんの真似ですか、これ…?」

「…おい、名無しさん。」

「はい?」

「目を閉じろ。」




刹那、名無しさんの頭は真っ白になり、まるで時が止まったように感じた。
そのくせに、胸はドクドクと脈打ち、心音だけが、頭に響く。




「り、リヴァイ兵長、…どうしたんです。急に…///」

「……」

「兵長?」

「く…っ///くっくっく…」

「」


噛み殺し、喉から漏れる笑い声に、名無しさんは言葉を失った。



………っやられた!!////





「リヴァイ兵長…!!…最低です!セクハラ!!パワハラ!!職権乱用〜!!」

「うるせぇ、いいから目ぇ閉じろ。」

「もうその手には乗りませんから。」

「…ッチ」



ふんっと、大袈裟にそっぽを向いて拗ねた態度の名無しさんに、リヴァイは気だるそうに舌打ちをしてイスから立ち上がる。

妙に距離が近いと、名無しさんが一度背けた顔を彼に向けると、
唇が、重なった。

それは一瞬で、ちゅ…と音を立てて離れる。

放心のまま表情を確認するも、リヴァイはいつもと変わらぬ仏頂面だった。



「……まだ、目ぇ瞑ってなかったじゃないですか〜!!」

「…そこかよ、馬鹿が。」

「どっちが馬鹿ですか!何平然としてるんですか!兵長の馬鹿!」

「おい、名無しさん。」

「…はい。」





「俺と付き合え。」




END おまけ→
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