novel*short*

□酔っ払い注意報
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 朝起きたら、ひどい頭痛と吐き気がした。

「う…」

(なんや、これ……。めっちゃ頭痛いねんけど。昨日オレ何してたんやっけ……)

 そのまま起き上がって額に手を当てる。急にのどが乾いた気がして水を求め台所に行こうとするも、ふらふらして立ち上がれない。部屋に差し込む光でさえも煩わしい。
 諦めてまた布団にぱたりと倒れ込む。

(ん?)

 なんだかいつもと違う。頭の方に違和感があり、なんやろうと手で探ってみると。

「うさぎ……?」

 それはうさぎのぬいぐるみであった。

(なんでオレの部屋にうさぎなんか……オレの…部屋……?)

 その瞬間、大谷の意識は覚醒し、がばっと跳ね起きた。

「ど、どこやここーーー?!」

 が、頭痛のせいで再び布団に伸びてしまう。「うぅ」と呻きながら薄目を開けて部屋を見回すと、自分の部屋でないことは明らかだった。散乱しているゲーム機、積み上げられた漫画本、コートかけにかかる女物の服……。
 そのすべてに見覚えがある。ここは。

「あ、大谷起きた?」
「小泉……?」

 ここは何度か訪れたことがある他でもない彼女の部屋であった。

「大丈夫?あ、水持ってきたで。飲む?」
「……のむ」

 何故、リサの部屋で寝ていたのか。
 この頭痛はなんなのか。
聞きたいことは山ほどあったが、今は水を欲する気持ちの方が大きい。起き上がるのも億劫な大谷をリサは甲斐甲斐しく抱き抱え、そっと口許にコップを運んだ。

「……ん」
「飲めた?」
「うん」

 「良かった」と言って微笑むリサは何だかいつもより優しい気がする。

「気分はどう?」
「あたまいたいし、きもちわるい……」
「そうやろなあ。あんた昨日めっちゃ酔ってたもん」

(酔ってた…?ああ、酒か。これは二日酔いなんか。そういえば昨日はサークルの奴らと飲み会で……けどなのになんでオレ小泉んちに……?あかん、全然覚えてへん…)

「……なあ」
「んー?」

 何故だか上機嫌でリサが返事をする。

「オレ、昨日なにやった?」
「え」
「うぅ、頭割れそうや…オレなんで小泉の家におるん?」
「は?まさか覚えてへんの?」
「サークルの飲み会やったんは覚えてる」
「……その先は?」
「えっと…あんまり」
「あんまり?」
「……あの、まったく」
「まったく、やとお…?」

 大谷が躊躇いがちにそう答えると、みるみるリサの顔に怒りが浮かんできた。

「え、なに」
「ほんまになんも覚えてへんの」
「えっと……はい」

 恐る恐るリサの顔を見ると、そこには目を釣り上げ髪を逆立てた般若がいた。

「あの、小泉……?」
「こんのどアホ!!!」

 怒鳴られた。何故だかは分からないが勢いに圧されて「ご、ごめん」と謝ってしまう。だが、大谷は次のリサの言葉で全ての思考が停止した。

「あたし初めてやったのに!!」

 ――え?

「あたしイヤやって言うたのに大谷が無理矢理……でも嬉しかったのに!なのに覚えてへんとか…」

 リサの目には少し涙が浮かんでいて。

「もう、しらん」

 そう言って部屋を出ていってしまった。
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