novel*short*
□遅刻の理由は
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「あ…」
驚いて、思わず息を飲んだ。
小泉の遅刻癖は相変わらずで、ホントはもはや今となっては怒りも沸いてけーへんねんけど。
「ごめーん!おそなった!」っていつもみたいに頭を下げながら走ってるコイツを、どうしばいたろか考えていて。
おそるおそる顔を上げた小泉はどこかいつもと違う。
「あの…どう?」
小首を傾げながら、オレのせいで上目使いにならんのやけど、それでも目をぱちくりさせてる小泉に、悔しいけど、こんなん絶対言わへんけど、一瞬見とれた。
「え、ええんちゃう…」
ぎこちなくそう言うと「ほんま?!」って嬉しそうにするから、
「うそや、うそ!」
「あー!なによそれ!」
「お前そんなんしてるから遅刻するんやろ」
「ぐ…」
照れ隠しに憎まれ口しかいえんオレ。
ほんまは、その、きれいやでって言ってやればええだけなんやけど。
「たまにはお化粧がんばってみようと思っただけやもん!」
マンガみたいに頬を膨らませる小泉に、心のなかで、ごめんって謝って。
オレは顔が熱くなるのを感じながら、
「いくで!」
強く腕を引っ張ったんや。