long dream of SD

□もう一人の問題児
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放課後、香は迷っていた。
なんとなく気まずさがあって教室の掃除が終わっても体育館に迎えずにいた。

「おい」

机の前で鞄を見つめたまま考え込んでいると香は頭を手でぺちっと叩かれた。
振り返ると流川がたっていた。

「もう行くけど」

「あ、うん」

「…今日は行かねえの?」

「う…ん…」

「来いよ」

「え?」

「…じゃあ先いくから」

流川はそう言って、背を向けた。
叩かれた頭を押さえて香は教室を出ていく流川を見つめた。

…優しい。
仏頂面のくせに。
どうしてそんなに優しいの?

小さくため息をついて、鞄を肩にかけた。

帰ろうと思って校門のところまで行ったけど、やっぱり体育館の方が気になって。
少しうろうろしてから、体育館のドアを開けた。

「あ、香ちゃん」

彩子に早々に発見されると、木暮もやあと手をあげた。
香は頭をぺこっと下げて中に入る。
晴子は藤井と松井を誘ってきたのか三人で二階から手を振った。
香も手を振り返し、彩子の近くに行った。

「あれ?…新しい人?」

コートでは桜木が初めて見る人と向かい合っていた。

「あいつは元々バスケ部よ。宮城リョータ。二年。入院しててね」

「入院?大丈夫なんですか?」

「ただのケンカだもの」

「…ケンカ…?」

怖い人なんだろうか。
香は桜木と向かい合っている宮城を見つめた。

そんなに大きい人じゃないんだな。
むしろ…私より低い…。

それでも宮城は桜木のボールを簡単に取り、偉そうに笑っていた。
もちろん桜木は黙っているわけはなく、ボールを取りに行くが思いっきりファールをしていた。

「おい!今のはファールだろ!」

その一言から、あっという間に二人は取っ組み合いを初めてしまった。

「すごい…なんて戦いだ…」
「目にも止まらぬ連続技…」

「感心してる場合か!!止めなさい!」

彩子の言葉に一年生は走って二人に駆け寄る。

「我関せず」

「流川も行きなよ!!」

香が流川をばしばし叩いていると、宮城の身体が宙を舞った。

「ああ!」

「こんのクソガキーっ!!」
「ふぬーっ!!!」

もう誰も止められない。
そう思ったとき。

現れた赤木に首根っこを掴まれ二人は大人しくなった。
彩子はほっと胸を撫で下ろし、香も安心していた。

「バカタレ×2が」

体育館に響く拳を落とした重い音に、香は肩をすくめた。

ふたりは頭を押さえてしゃがみこんでいた。


「さあ練習だ」

赤木の一声で部員たちは練習を開始した。

その時、香の携帯がポケットの中で震えた。
外に出て携帯を見ると、仙道からメールが来ていた。

『今日暇?』

たった一文のメールが仙道らしくて香は笑った。

『湘北応援中』

香もそれだけ打って送信した。

『それは残念』

すぐに返ってきたメールにくすっと笑って携帯をポケットにしまった。
また体育館に戻り、香はまたケンカしている桜木と宮城を見て笑った。
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