long dream of SD

□翔陽戦前半
1ページ/6ページ

香は布団の中で丸まっていた。
本当なら起きて準備をしないといけない時間。
今日は湘北と翔陽の試合の日。
晴子と応援に行く約束をしているのに、香はなかなか布団から出られずにいた。

「…はあ〜…」

頭の中には三井のキスと流川と晴子のこと。
そして木暮のこと。
あーだこーだ悩んでまた振り出しに戻る。その繰り返しを一晩中していた。

試合は見に行きたいけど、三井にどんな顔して会えばいいのかわからなかった。

「…もぉ〜…どうすりゃいいのよぉ…」

そのとき、携帯が鳴った。

『おはよー!いよいよだね!洋平くんたちも来るって!みんなで応援しようね!』

「…はる…」

テンションの高い晴子のメールで、香はため息をついてからのそのそとベッドから出ることにした。

「…まあずっと避けるわけにもいかないしね…」

香はそう呟いて、クローゼットの扉を開けた。
日曜だけど部活の応援には制服を着ていかないといけないのが高校の決まり。
アイロンをかけたワイシャツに袖を通した。

「あれ?お姉ちゃん今日日曜だよ?」

「わかってるよ。バスケ部の応援に行くから…」

「彼氏?ねえ!彼氏の応援!?」

「違うって…」

「いいなあ!私もいきたいなあ!」

「あんたは自分の部活があんでしょ」

「そーでした」

香は妹に洗面所を譲り、玄関へと向かった。

「朝御飯は?」

「いい。間に合わないからー」

母親の声に靴を履きながら答えて玄関のドアを開けた。

駅の近くに来たときに、携帯が鳴った。

「え?お兄さん?」

香はディスプレイに表示された赤木の名前に少し驚いて慌てて電話に出た。

「お兄さん?どうしたんですか?」

「香か?悪いな。今どこだ?」

「駅に着いたとこですけど…」

「ああ、良かった。あのな」

「香ちゃん!?」

電話の向こうで赤木の声が彩子に遮られた。

「彩子さん?」

「ごめんねえ!コールドスプレーが切れちゃって!悪いんだけど買ってきてくれないかな!」

「い、いいですよ?何本ですか?」

「5本!」

「わかりました。急いで買ってきますね」

「ありがとおー!!!」

「…香?あー悪いな」

彩子から電話を取り返し、赤木は香にお礼を言った。

「晴子にかけたんだが携帯を置いてったみたいでな」

「あー…はるらしい…」

「本当すまないな」

「いえ、じゃあまた!急いで買ってきますから!」

香は電話を切って駅前のマツキヨに走っていった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ