long dream of SD

□片想い
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帰宅して一息ついたとき、鞄の中の携帯が震えた。

「…ん?」

一瞬誰からかわからなかったが、ついさっきメルアドを渡した仙道からだった。

【仙道です。早速メールしました。
今日は試合見に来てくれてありがとう。って俺のじゃないか。
でも、やっぱり来てくれてありがとう。かな。
あー明日からまた地獄の特訓だよ…。
監督、湘北にギリギリで勝ったことすげー怒ってるんだよな。
そんなわけで今度一緒にどこか出掛けませんか?】


メールを読んで香はぷっと吹き出した。

「なにがそんなわけでなの」

クスクス笑いながら香は返事を打った。

【今日はお疲れ様でした。湘北は負けちゃったけど、次はきっと負けませんよ!!
だから特訓頑張ってください。
そんなわけで、のつながりがわからないので約束はできませんっ】

「…送信っと」

ふふっと笑って、香は携帯をベッドの上に置いた。
そして、ベッドに転がり目を閉じる。

浮かぶのはさっきの試合。

桜木くん凄かったな…。
流川もかっこよかったし。
皆もいつも以上にかっこよかった。
…木暮先輩も…かっこよかったなあ…。


目を開けて、少し考える。
木暮先輩を思い出すだけで何故か動悸が激しくなる。
何故。


……好きなのかな…。

そう思うと顔が熱くなってきた。
枕に顔を埋めてそれを誤魔化す。

そして、ふと思い出す。


「でかい女」


その言葉はいつだって呪いのようにつきまとう。
誰かを好きになりかけると、その言葉は私を押さえつける。
でかい女は、誰かを好きになっても。
傷付くだけだと。

きっと木暮先輩だって、背の低い普通の可愛い子が好きなはず。
晴子とか藤井さんとか松井さんとか、彩子さんとか。

「…そーいや…彩子さんとはいつも仲良さげだしなぁ…」

はあと大きくため息をついて、また枕に顔を埋めた。
そして、そのまま。
芽生えかけた恋心に蓋をするように、香はぎゅっと目を閉じた。








「…はっ!!」

がばっと起き上がると既に外は明るくなりかけていた。
時計を見ると、朝の4時半。

「…寝すぎでしょ…」

寝る子は育つという言葉を苦々しく思いながら、香は頭をぽりぽりと掻いた。

シャワーを浴びて朝御飯を食べて、制服に着替えたはいいけど、まだ6時。

「どうしたもんか」

香は少し考えてから、鞄を持って家を出た。

「もう行くの?」

「うん。ちょっと散歩しながら行く」

母に答えて香はローファーを履いて玄関の鏡で前髪を少し直した。

朝の早い町は、少しだけいつもと違って見えて香は大きく背伸びをした。

「気持ちいいなあ」

香はぶらぶら歩きながら近くの公園へと向かった。
少し大きめの公園は犬の散歩をしている人、ランニングをしている人がいた。

「皆結構早起きなのね」

すると、公園の奥の方からボールの弾む音が聞こえてきた。

「あ、バスケのコートがあるんだっけ」

香は自然とその方向へ足を進めた。
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