long dream of SD
□入学式
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4月。
満開の桜の下で香は晴子の姿を見つけた。
「はーるー!!!」
「香!!」
まだ着なれない制服のスカートを揺らして晴子は香に駆け寄った。
「クラス違っちゃったね」
「うん残念」
「あ!香、流川くんと同じだったでしょ!」
「え?流川?あの富中の?」
晴子は顔を赤くしてうんうんと頷いた。
「…ごめーん、見てない」
「いいなー!!クラス遊びに行っちゃおー」
「こいこい!」
二人は笑いながら教室へと向かっていった。
「じゃあ、放課後ね」
「うん、じゃあね」
お互いそれぞれの教室に入っていく。
香は晴子の想い人である、流川楓の姿を探した。
(…あれ?いないじゃん)
何度も雑誌や隠し撮りしたと思われる写真を見せられていた香は、記憶の中の流川を探すがその姿は見つけられなかった。
(遅刻?初日から?)
そう考えながら席に着くと、チャイムが鳴り担任が教室に入ってきた。
担任が挨拶をした時だった。
後ろの扉が静かに開き、こっそりと一人の男が入ってきた。
その男はこそこそ入ってきたつもりだろうが、でかい体のせいで見事に目立ってしまっている。
(…あ、流川…?)
「流川!こそこそしたって目立つんだぞ!
いいからさっさと座れー!」
担任は笑いながらそう言うと、クラスからも笑いがこぼれた。
「……ウス」
流川は小さく呟いて、少し頭を下げた。
そして辺りを見回して、ひとつだけ空いている席に座った。
香の斜め前。
そして流川は席に着いた途端、机に臥せって眠り始めた。
「ぅおいっ!!」
香はつい突っ込んでしまった。
(やば、つい…)
教室の空気が一瞬静まったと思ったら、笑い声が響いた。
「いいぞー河嶋!先生の言いたいことをその一言で全て言ってくれたな」
担任は笑いながら親指を立てた。
「あ…はあ…」
(うひゃーやっちゃったー!恥ずかしいっ!!)
香は顔を真っ赤にして体を小さくした。
ちらっと視線を流川に向けると、すっごく不機嫌そうに頭をかきながら起きていた。
そしてほんの少し香を見てから、ため息をついた。
(…うー…はるには申し訳ないけど。
私苦手だっ。…突っ込んどいてなんだけどさ)
不機嫌な流川と、恥ずかしがる香をよそに、クラスの雰囲気はなんだかとっても和やかになっていた。