dream of 進撃の巨人
□幸せの意味
1ページ/16ページ
コウにとって東洋人であることは誇りであると同時に厄介な血だった。
コウとその家族は、ウォールマリアの南西に位置する小さな集落で暮らしていた。
少し離れた隣の家にも東洋人の家族が暮らしていた。
東洋人であることは集落の皆が知っていた。
といっても純粋な東洋人はコウの父と隣の家の母親だけであったが。
「コウはお父さんそっくりだね」
コウの母親はそう言って優しく黒く艶やかな髪を鋤いた。
コウはその黒髪が自慢だったし、切れ長の目と黒い瞳が好きだった。
父親がとても大好きだったから。
隣の子供達は3人いたが皆父親の血を濃く継いだのか、皆金髪で青い目をしていた。
見た目は違っても東洋人の女は決まった墨を入れる。
その日、コウと隣の家の真ん中の長女が9歳を迎えたためその儀式が行われた。
儀式といっても左腕の内側に墨を入れるだけなのだが。
「痛いよ〜」
「我慢するのよ」
「無理〜もうやだあ」
「コウちゃんは泣かなかったわよ?」
「コウはコウだもん〜」
涙を流しながら左腕に針を入れられるコウの幼馴染みは、隣で包帯を巻いてもらっているコウを見て助けを求めた。
「頑張って。お揃いだよ?」
その言葉に幼馴染みは涙を拭いて頷いた。
包帯を巻く頃には笑顔で、お揃いだねと喜んでいた。
模様の意味はわからないが、なんだかそれがとても誇らしく思えてふたりは自慢気に笑った。
幸せだった。
本当に、幸せだったのに。