dream of 進撃の巨人

□素直になりなよ
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気がつけばいつも目で追っていた。
背が高くて、優しい顔で、成績がいいのに目立たない彼を。

「ここ、いい?」

「え?あ、うん。どうぞ」

食事中なのに、今日も彼を見つめていた。
ここまでくると病気だねってくらい無意識に。
だから、今もアルミンが声をかけてきたことにも気がつかなかった。

「何を見てたの?」

「え?ううん、別に…」

「お前いっつもぼやっとしてるよな」

「う、すいません…」

「エレン。もう少し言い方を考えた方がいい」

「ごめんね、コウ。エレンが…」

「ううん!別に、本当のことだし…あはは」

ミカサとアルミンに怒られたエレンはちぇっと舌打ちをして、少し膨れてパンをかじった。

エレンはいつもはきはきしていて羨ましい。
ミカサは好きな人に堂々とできて羨ましい。
アルミンの周りにはいつも人が集まっていて羨ましい。

私に無いものばかり。

そう思って、あ、と気がついた。


「だからか…」

「え?なに?」

「ううん、なんでもない」

アルミンに首を振って誤魔化す。

私は、彼に自分と似てる部分を見つけたから気になるんだ。
それに気がついた。
そう思うと、成績がいいところ以外はなんとなく似てる気がする。

あまり、目立とうとしないところ。
喋らないところ。

それと。

背が高いところ。



「背が高いのは立体起動には不利だからな」

いつだったかある教官に言われたことがある。
だけど、ベルトルトは上手だし、ライナーだって体格がいいのに上手だし。
ユミルだって背は高いほうだけど、上手だし。

結局、自分がでくの坊だってことを再認識するだけだった。
こんなでかい女は誰ももらってくれないんだから兵士にでもなれと言われて訓練兵になった。
体格がいいから兵士としてならやっていけるかもと思っていたのに、早々に教官にそう言われてしまい落ち込んでいた。
背が高くて上手い人はたくさんいるんだから、きっと教官は私を慰めてくれての発言だったのかもしれない。
だけど、それがとても悔しかった。

陰口を言われてるのも知っている。
巨人って呼ばれているのも知っている。
根暗とか邪魔くさいとか。
そういうのは昔から言われてる。

だけど、言われ続けていても。
それに慣れる日はこない。
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