dream of 進撃の巨人

□憲兵になりたい理由
1ページ/10ページ

コウの朝はいつも同じ。
窓を開けて髪を鋤いて、赤いリボンを結ぶ。
井戸で顔を洗って歯を磨く。
そして、お隣の飼っている鶏の卵をもらいに行くと、隣の家から寝ぼけた顔のあいつて出てくる。

「おう、おはよ」

「おはよ、コニー。今日も二個貰っていくね」

「おう。後で牛乳貰いに行くわ」

「うん、用意しておく」

コウは卵を二個手に取り、鶏小屋のドアを閉めた。

「あと少しだね」

「ん?おお、あと2週間だな。寂しいか?」

「んー…ちょっとね」

「へっ、嘘つけ。清々するとか思ってんだろ?」

「ばれた?」

コウは舌を出して、ケラケラ笑いながら自分の家へ向かった。
コニーはちぇっと舌打ちをしてから、井戸に向かい顔を洗った。
その様子を窓から眺めて、コウはため息をついた。

口ではああ言ったものの、やはりずっと一緒に居たコニーと離れるのは寂しい。
寂しいというか、コニーのいない生活が想像できない。
産まれたときからずっと一緒だったから、コウはコニーがいて当たり前の人生だったのだ。

「おはよう、コウ。ん?まだ朝食作ってないのか?」

「あ、お父さん!おはよう!ごめん、今作る」

わたわたとエプロンを巻いて、貰ってきた卵をふたつフライパンに落とした。

「あ!」

黄身が3つ。
コウは笑顔になる。
コニーが昔言っていた。
双子の卵は幸運の印だと。

「お父さん!見て!ふたご!」

「おお!ついてるな。今日は大物が捕れるといいな」

「うん!」

コウは目玉焼きを皿にうつし、窓の外を見た。
コニーが屋根に登り背伸びをしているのが見えた。

「あいつはまた屋根に登ってんのか。バカと煙は高いところが好きってか」

「もう、お父さんたら。コニーに言っちゃダメよ!
私が言ってやるから」

「ははっ」

コウは屋根に登って空を見上げるコニーが好きだった。
太陽のように真っ直ぐな瞳で、いつも自信に溢れている。
頭はあまり良くないけど、感性で生きているという言葉がぴったりな人だった。

「今日はお前も来るんだろ?ちゃんと矢は磨いておいたか?」

「当たり前!狩人の娘よ?」

「そうだな。前回の鹿もでかかったしな。お前は才能があるからな」

「ふふん」

「ま、調子に乗るなよ。何が起きるかわからんからな。気を抜くな」

「わかってますー」

コウはふたごの卵にフォークを入れた。
半熟の黄身がとろっと溶け出していく。
コニーの家の卵は、いつも美味しい。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ