dream of 進撃の巨人

□忘れないで
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私の5回目の壁外調査は、エルヴィン隊長の判断により急遽引き返すことになった。
はっきりとしたことはわからないが、どうやら巨人が壁の方へ移動を始めたらしい。

隊に5年前の悪夢が蘇った。

あの日から、私の身寄りは無くなった。
故郷も無くなった。
人類の尊厳を取り戻すため、私は調査兵団に入団した。

それはちょうど1年前のこと。

明後日には新兵の入団式があるのに。
こんなときに、また。
あの悪夢が再び起こるなんて。

馬を走らせながら、どうか無事でいてほしいと願った。
それが誰か個人に向けての願いではなく、壁が、市民が、そして、仲間が無事でいてほしいという、大雑把な願いであった。

そしてその願いが叶わないことはわかっていたが、願わずにはいられなかった。


何時間たっただろうか。
ようやく壁が見えてきた頃、黄色の煙弾が壁の中から発射された。

あれは?


先輩方が次々と立体起動で壁を登っていくのが見えた。
なぜ?馬を置いてまで…?

出発点だったトロスト区の門がすでに壊されているのが視界に入ったとき、私の少し前を走るナナバさんが呟いた。


「岩で塞がれている…」

「え?」


その言葉を、にわかに信じられなかった。
しかし、確かに破壊された門が、更に大岩で塞がれていたのだ。
誰が?いや、どうやって?

疑問が浮かぶが、それよりも1秒でも早く壁内に行かなければ。
私達が少しでも早く着くことで助かる命があるはず。

その思いだけで壁を登った。
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