long dream of うたぷり

□プロフェッショナル
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香は食堂で一人、ため息をついていた。

みんなどういうつもりなんだろう。

「…はぁ…」

カチッと音が聞こえて、食堂の時計を見上げる。
7時。

「あ、嶺二くん…」

慌てて立ち上がり、嶺二の部屋へと向かった。

「嶺二くん…どう?」

ドアを開けると、嶺二は起きて着替えているところだった。

「あ、ごめ…」

「大丈夫だよー?」

慌ててドアを閉めようとしたのを止めて、嶺二はドアを開けた。

「熱は?」

「37℃だった」

「大丈夫?」

「うんっ!元気モリモリッ!」

笑顔を向ける嶺二に香はほっとして笑った。

「良かった。
あ、ごめん、お布団片付けるね」

嶺二は布団に伸ばした香の手を取って。

「今日もここで寝てよ」

「…え?」

「…なーんてねっ!僕が運ぶよっ」

一瞬真剣な顔の嶺二に香は心臓がぎゅっと締め付けられた気がした。
だけど、すぐにいつもの嶺二に戻り、にこっと笑って布団を持ち上げた。
一瞬ふらっとしたが、そこは持ちこたえてドアを足で開けて廊下に出た。

「大丈夫?」

「だーいじょーぶっ!」

「ありがとう」

「うんっ」

にっと笑う嶺二の顔が、香の心をふわっと包み込むようだった。

「ここでいい?」

「うん。ありがとう」

布団を置いた嶺二は部屋をきょろきょろとして言った。

「へへ、2回目だね。なんかちょっと変わった?」

「お見舞いに来てくれてたじゃない。4回目でしょ?」

「すぐ追い出されちゃったし。アイアイとおばちゃんに」

あははっと笑う嶺二に、香も笑って言った。

「じゃああとは黒崎くんだけかな、来てないの」

「え?」

「カミュと藍ちゃんは来たことあるんだ」

「…そ、そうなの?」

嶺二は笑って話す香の顔をじっと見つめた。

「藍ちゃんは看病してくれてね、カミュはお茶飲みに来て…。ん?嶺二くん?」

香は嶺二が悲しそうな顔をしていることに気がついて、嶺二に近付いた。

「どうしたの?やっぱりまだ調子悪い?」

そう尋ねる香に、嶺二は言った。

「香ちゃんは僕のことどう思っているの?」

「え?」

「…僕だけ…特別じゃないことはわかってるけど。
僕のこと、男として見てくれてる?」

「…嶺二くん?ど、どうしたの?」

嶺二は首を傾げる香の腕を引っ張りぎゅっと抱き締めた。

「…れ、嶺二くん…?」

「おかしいよね。わかってるんだ。
だけど、どうしても…君を独り占めしたいって思ってしまう」

「…嶺二くん…」

「…君が…好きなんだ…」


絞り出すような声に、香は嶺二の胸のなかで俯いた。

「…嶺二くん…私…」




この先の言葉が思い付かない。

嶺二くんの気持ちは嬉しいし、嫌いじゃない。
嶺二くんのことは好きだけど。
きっとそれは、恋愛としての好きではなくて。

だから。


「…ごめん…なさい…」


そう答えるしかなかった。
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