long dream of うたぷり
□恋のつぼみ
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昨日からレイジの様子がおかしい。
藍は目だけで嶺二を追いかけてそう感じていた。
いつもより静かな上に、キョロキョロと何かを探している様子。
そして、何より。
「香を見つけた時にすごく笑顔になっている」
「…そ、そんなことなーいよー?アイアーイ?」
「僕の目が間違ってるとでも言うの?」
「いや、そんなことはないけど…。気にしすぎだよぉ?僕ちんはいつもどおりさっ!」
「あ、香」
「えっ!?」
振り返った嶺二は、しまった、の四文字を頭に浮かべた。
「…さ、何があったか白状しなよ」
藍の言葉に、嶺二は観念したかのようにため息をついて藍の前に座ろうとした。
が、そこをダッシュで逃げて広間から飛び出した。
「あ」
さすがの藍も反応できないほどの速さで逃げた嶺二に、やっぱり何かある、と呟いて今度は標的を代えることにした。
藍は香の部屋をノックした。
「はあい?」
「僕」
「え?藍ちゃん?」
ドアを笑顔で開けた香に、藍は開口一番にこう尋ねた。
「レイジが変なんだけど」
「……いつもでしょ?」
香は真剣な顔の藍を見て、え?と首を傾げた。
藍ははぁとため息をついて、香を押し退けて部屋に入っていった。
「え!ちょっと!藍ちゃん!?」
「キミってバカ?僕がレイジが変って言ったらいつもと違うって意味だってわからないの?」
「そ、そうですね…」
香はソファに座ってため息をついている藍の前に正座して頷いた。
「で?なにか知ってる?」
「えー?嶺二くんが変な理由?んー…特には…。まあ、確かにいつもよりテンションがおかしいかなぁとは思っていたけど」
「ふうん…そっ」
藍はそう言って香をじろじろ見たあとで、ソファから立ち上がった。
「ありがと」
「あ、いえ、お役にたてませんで」
「うん。始めからそんなに期待してなかったしね」
「藍ちゃん、ちょいちょいひどいよね」
「…あ、そうだ」
藍は足を止めて振り返った。
「曲はどうなの?」
「う」
香はさっと藍から視線を逸らした。
「…まだなんだね。待たせるからにはいい曲をお願いね」
「は、はい…」
「じゃあね」
颯爽と去っていく藍の後ろ姿を見送り、香はため息をついた。
ここに来てからため息の数が増えた気がする。
それでも、仕事は仕事。
きっちりやらなきゃ、と、香はピアノの前に座った。
それにしても。
「嶺二くん、なにかあったのかな」
香は藍の言葉を思い出して、首を傾げた。