long dream of 進撃の巨人

□番外編〜思い出〜
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〜エレンとの思い出〜

コウはひとり悩んでいた。
対人格闘の技が上手くいかず、さっきから延々と地面にあーでもないこーでもないと図を描いては消していた。

「この右足を出すと……違うな…どうだったっけー…」

父、ボリスに遊びの中で教えてもらった技が思い出せなかった。
自分より身体の大きな相手に使う投げ技。

「一回だけナイルさんを投げさせてもらったんだよなあ…」

ボリスに「相手になってやってくれ」と言われ、困った顔で相手になってくれた。
その顔を思いだし、コウはひとりクスクスと笑った。


「なーにさっきからやってんだよ」

その時、後ろからエレンが笑ってやってきた。

「…いつから見てた?」

「そこになんか書き出してから」

「…ほぼ最初からじゃない」

コウは恥ずかしくて顔を赤らめ、地面の図解を足で消した。
それをエレンは覗き込み笑った。

「お前、絵、へったくそだな!」

「う」

「なにこれ?人?これ足?なんでこんなところから足が出てんだよ!
あははははは!!!」

「…もう!いいから!!」

コウは笑い転げるエレンに、頬を膨らませて睨んだ。

「わりわり。…あれだろ?技が上手くいかねえんだろ?」

「うん…」

「俺にやってみろよ」

「え?」

「稽古はひとりよりふたりってな」

そう言って笑うエレンに、コウは頷いた。
そして、構えるとエレンも構えた。

「いくよ」

コウが足を踏み出した瞬間。

「きゃあっ!!」

コウの顔の横をエレンの拳が掠めていった。
驚いた顔のコウに、エレンは意地悪そうに笑った。

「受けるだけなんて言ってねえぞ?」

「…もー…!!」

コウはその一言で真剣な顔になり、足を踏み出した。






三十分後、エレンはとうとう天を仰いだ。

「…やっ…やった…はぁ…はぁ」

「…いってえ〜…くっそー…」

エレンは頭を掻いて起き上がった。
その顔は悔しそうでもあり、楽しそうでもあった。

「ありがと…エレン…はぁ…はぁ…」

「おう!…ってか息上がりすぎだろ。体力落ちてんじゃねえか?」

「…はぁ…エレンには…ついてけないよ…あは…」

「ま、俺もいい訓練になったよ。あの投げは凄かったからな。
今度教えてくれよ」

「うん!…こ、今度ね」

「おう!」

エレンは立ち上がり、コウに手を貸した。
その手を掴み立ち上がると、コウの足が既に力が入らず膝がガクンと折れた。

「え」

「きゃ」

そのまま、コウはエレンの手を引っ張ってしまいふたりは転んでしまった。
砂ぼこりが舞い上がる。

「…いた…ご、ごめん、エレン…」

「…おう、大丈夫か?」




「エレン…何をしているの?」


そこにエレンを探しにきたミカサとアルミンが立っていた。

「あ、ミカサ」

「何をしているの?」

「え?訓練だけど?」


「ミ、ミカサ!ほら!このふたりに限ってそういうことはないから!ね?」

目付きが鋭くなっていくミカサを、アルミンが慌てて止めた。


「ん?なっ!!!なあにやってんだてめええええええ!!!!」

その時、アルミンの後ろからジャンが怒鳴りながら走ってきた。

「うわ、ジャンまで」

アルミンは顔をひきつらせた。

「お前何してくれてんだこらあ!!コウ押し倒しといて、なにが?って顔してんじゃねえぞ!!!」

ジャンはエレンの胸ぐらを掴み無理矢理立たせた。
コウはジャンが何故怒っているのかわからず、オロオロしてしまった。

「ジャン?なに?ちょ、やめてよ」

「エレン!てめえ返答によっちゃあただじゃおかねえぞ!」

「はあ?やめろよ!服が破けちゃうだろ!!」

「だから服なんてどうでもいいだろうがあ!!」

「ちょっと!やめてったら〜!!」

「ミ、ミカサ!止めないと…」

「今回ばかりはジャンの言う通り。エレンの返答次第では罰が必要」

「ミカサも何言ってんの?アルミ〜ン!止めてよぉ!!」


結局、コウがジャンを投げ飛ばしてその場は収まった。
ジャンはしばらく機嫌が悪かったが、コウに再び投げられて、エレンに謝りに行かされたというのはまた別のお話。
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