long dream of 進撃の巨人
□解散式
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三年間の訓練生活を終えた日。
コウは上位10名に選ばれた同期を見つめていた。
ジャンはエレンに負けたのが悔しいのか、ぶすっとした顔をしている。
それでも、憲兵団に行けるとあってか宴会が始まる頃には上機嫌になっていた。
「やーっとくそ息苦しい前線からおさらばできるぜ!!」
「…ジャン。そんな風に言わないの」
コウはジャンをたしなめるが、ジャンはワインを飲み酔っているのか笑っている。
「仕方ねえよ。ようやく快適な内地に行けるんだからな」
「ジャン。ここだって5年前は内地だったんだぞ」
「エレン、やめなさい」
ジャンにエレンは強い口調で言う。
ミカサはエレンを止めるが、そんなことで止まるエレンではない。
「何が言いたい?」
「内地になんか行かなくたってお前の脳内は快適だと思うぞ」
「ぶふーっ!!」
「うわあっ!」
「わ、わるい」
エレンの言葉にライナーは吹き出し、隣に座るアルミンに全てかかってしまった。
「…なあ、エレン。俺は誰よりも現実を見ている。
四年前のマリア奪還計画で、人類の二割を投入し、その殆どが巨人の胃袋だ。
巨人を一体倒すのに平均三十人死んだ。巨人はどのくらいいるのかわからねえ。人類の三十分の一では済まない。
わかるだろ?
…人類は巨人には勝てねえんだ」
ジャンの言葉に、食堂が静まった。
「勝てねえから諦めるのか。
戦術の発達を放棄してまで大人しく巨人の飯になりたいのか?冗談だろ?」
皆、エレンを見つめている。
きっと、エレンは皆の理想を代弁してくれている。
そうコウは思った。
「俺は…夢がある。
巨人を駆逐して、この狭い壁を出て。外の世界を探検するんだ」
「はっ。めでたいのはお前の頭だよ!
見ろ!誰もお前に賛同してねえ」
ジャンの言う通り。
皆、下を向いてしまった。
エレンの言うことは正しい。
だけど、それに同意するのには勇気がいる。
「わかったよ。士気がさがるから腰抜けはさっさと内地にひっこんでろ」
「あーそうするさ。さっさと壁の外でもどこでも行きやがれ!死に急ぎ野郎!」
ふたりは近づき睨み合う。
いつものことだ。
「めんどくせえ」
「同感だ」
そう言った瞬間、エレンとジャンの拳が交わされた。
「あーあ、始まった」
誰かが呟いた。
「どうしたエレン!俺に勝てないようじゃ巨人になんか勝てねえぞ!」
「わかってるよっ!!」
「ぐっ…!!」
エレンの拳がジャンの腹にめり込む。
さっきまで食事をしていたのだ、見ている方が口を押さえてしまう。
「おーい、ジャン!やめておけ!エレンは対人格闘のトップだぞ!」
ライナーがそう言った瞬間。
ミカサがひょいとエレンを抱えてしまった。
「…いや、ミカサに次いでだったか」
ミカサはエレンを抱えたまま食堂を後にした。
「エレン!そうやっててめえはミカサまで調査兵団に道連れにするんだろう!!」
ジャンがそう叫んだのを、コウはジャンの口を手で押さえた。
「ジャン。言い過ぎ」
ジャンは、コウの上目遣いで睨む目から目を逸らして舌打ちをした。
コウはジャンをもとの席に座らせて、その隣に座った。