long dream of 進撃の巨人

□笑ってみる
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対人格闘訓練では、二人一組になり木剣を奪うまでの格闘を行う。
巨人討伐にはあまり重要な訓練ではないため、配点も低めである。
だから、ほとんどの訓練兵は他の訓練の骨休みとして適当に流している。

真面目にやっているのは。

エレン達のような馬鹿正直な者達か、サシャやコニーのような馬鹿か。

コウはどちらかというと、馬鹿正直な方だった。

「…ユミルは強いね」

「あんたも強いよ」

ユミルは木剣をコウに投げて渡した。

「…悪いけど他の人とやってくれ。
あたしはもう適当に流すから」

「わかった…。ありがとう」


コウはどうしたものかと辺りを見回した。
隣ではエレンとライナーが組んでいる。
二人は何かを話しているがコウの位置では聞こえなかった。

「コウ、もしかして一人?」

コウが振り返るとベルトルトが立っていた。

「ええ。ベルトルトも一人なら、組んでくれない?」

「うん、そのつもりで声をかけたんだ」

「ありがとう。…私がならず者でいい?」

「うん」


コウはベルトルトと組みながら、何故か懐かしい感覚を覚えた。

「…いたっ!」

「あ!ごめん!」

コウは思いっきり転んでしまった。
ベルトルトは慌ててコウに手を伸ばした。

「大丈夫?ごめん、つい本気で…」

「ううん、訓練だから」

コウはベルトルトの手を借りて立ち上がったとき、何故懐かしいと感じたのかわかった。

「あ」

「ん?」

「…そっか…」

「え?どうしたの?」

「ベルトルトと組んでる時に何故か懐かしいと感じたんだけど…。
たぶん、ベルトルトとの身長差が…お父さんと同じくらいだったんだなって」

「お父さん?」

「ええ。もう死んでしまったけど」

「…そうか…ごめん」

「ううん。今度はベルトルトの番だね」

コウはそう言って、構えた。
そういえば、お父さんとこうやって遊んだことがある。
遊びだったけど、今思えばそれは護身術で。

コウは遠い記憶を呼び起こすように、ベルトルトにゆっくりと近づいていく。
コウは左手でベルトルトの右手首をつかんだ。
それと同時に、円を描くように右足を引いた。
そのまま右手首を引き寄せ、右ひじをベルトルトの顎をめがけて打った。

ベルトルトは一瞬ひるみ、それを狙ってコウは右ひざをベルトルトの腹に入れた。

「ぐっ…!!」

ベルトルトの身体がくの字に曲がり、木剣を握る手が緩んだ。

「…大丈夫?」

コウはベルトルトの手から木剣を取り聞いた。
ベルトルトはお腹を押さえて笑った。

「…小さいと思って油断したよ」

「小さい人が大きい人に勝つための方法だからね」

父がかつてそう言って教えてくれた。
私の中に、父が残っている。
そう思ったら、自分にもまだ価値があるのかもしれないと思った。
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