dream of SD
□ふたりのペース
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放課後、香は担任から赤木に渡すよう頼まれたプリントを持って体育館へと向かった。
香も部活があり普段は体育館には行けないから、少し楽しみで足取りが軽かった。
赤木くんの部活してるとこ、久し振りだなー。
そんなことを思いながら、鼻唄まじりでドアを開けた。
ドアを開けると、まだ練習前のストレッチのせいか部員全員の視線が集まった。
「…ん?どうした?」
赤木はストレッチを中断して香に駆け寄った。
「ごめんね、部活中。これ、先生が明日までに出してくれって」
「ああ。わざわざ悪かったな」
「ううん。ね、ちょっと見てってもいい?」
「構わないが、お前も部活だろ?
「ちょっとだけ」
香は両手を合わせて赤木にお願いをした。
赤木は、笑って中に招き入れた。
「…メガネくん。あのキレイな人は?」
桜木がこっそり木暮に耳打ちする。
他の部員も同じことを思っていたらしく、木暮の返事に耳を傾けた。
「ん?ああ。河嶋さん、赤木の彼女だよ」
その答えに、桜木だけでなく、全員が驚きの声をあげた。
「なあにいいいいいいいい!!!!?????」
「嘘だろ!?あんなゴリにあんなキレイな彼女がいて!!嘘だ!!何かの間違いだ!!」
桜木は動揺しあわてふためく。
いつもなら赤木のげんこつが飛んでくるところだったが、赤木も「キレイな彼女」発言に少し気を良くしていたこともあり、睨み付けるだけにしておいた。
「あの子桜木くんでしょ?有名人」
「ああ。うちの問題児だ」
クスクス笑う香を見て、桜木は更に大騒ぎを始めた。
「嘘だ〜!!嘘だと言ってくれえー!!」
「こらこら、気持ちはわかるが少しは落ち着け」
木暮は桜木をなだめ始めた。
「…はっ!!そうか!あのゴリに無理矢理付きまとわれて…!!」
「おいおい、赤木をなんだと思ってるんだ。
それに、河嶋さんの方から付き合ってほしいって言われたんだぞ?」
「なあにいいいいいいいい!!!!?????ありえーん!!!!」
「おい、木暮。余計なことを言うな」
顔を赤くした赤木が木暮の頭を軽く叩く。
「ああ、悪い。でも、まあ、桜木の気持ちもわからんでもないよ。
河嶋さんと言ったら中学の時からマドンナでさ〜…」
木暮は過去を思い出して目をつぶった。
「…ほら、いいから練習始めるぞ!」
赤木は手を二回叩いて練習を再開させた。
桜木はまだぶつぶつ不満を漏らしていた。