○第一篇
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空港まで直ちゃんと、直ちゃんの母親が見送りに来てくれたのを覚えている。
俺が泣き出してしまうと直ちゃんは小さく笑った。
「恭平」
また涙を指先で拭って顔を見るように言った。
俺は最後になるかもしれない彼の顔をしっかりと見据えた。
直ちゃんの一重が優しそうに下がる。
「羨ましいな。いっぱい友達が出来るんだよ」
「・・・でも、僕・・・直ちゃん・・・」
「恭平のことを待っている人がいるんだよ」
それって本当?
俺は鞄の肩紐を両手で握り締めて大きく頷いた。
直ちゃんの言葉は信じられる。
「僕、直ちゃんがさみしくなったら戻ってきてあげるからね!」
俺にとってヒーローな直ちゃんを助けてあげる。
それが友達でしょ?
直ちゃんは頷くと俺の頭を撫でてくれた。
「頼りにしてるよ」
朝ご飯はシリアル。
たまにご飯が食べたくなる。
母はすぐにアメリカ暮らしに慣れてしまった。
俺も1年もすると周りの環境に慣れ、転校生として人気者になった。
絶対にヒーローになると決めた。
俺は今までの自分を捨て、生まれ変わった。
誰1人として自分を知らない世界で殻を脱ぎ去るのは容易なことであった。
「恭、あんた遊んでばっかいないで少しは勉強したらどうなの」
母は牛乳をがぶ飲みする息子に叱咤。
俺はソファで寝そべりながらロールパンを口に突っ込んだ。