─接触1

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「いてて・・・」

床に右半身をぶつけた。

「おい」

慌てて起き上がった。
五月蝿くしてしまった。

「五月蝿いんだけど」
「ご、ごめんなさい」
「はい?聞こえない」

父が近付いてくる。

「ごめんなさい!」

右手が振りかざされ、頭部を打った。

声にならない声を上げて床にうずくまる。

痛い。

父は舌打ちをして俺の前にしゃがんだ。

「またお前のママは遊びに行ったよ。ほんと下半身ゆるゆるだよな」

父の言っている意味が半分理解出来ず、体を起こせずに黙る。

「本当は俺の子じゃなかったりして。お前と俺似てないしな」

空笑いをして床に頭をつける俺の体に足を載せた。
虫を踏みつけるように様子を窺いながらじっくりと体重をかけていく。

骨がミシミシと音を立てているような気がした。

「どうせ俺は金だけの男だよ。愛されてなんかないんだよ。お前だってそうだ。出来ちゃったんだから仕方ないよな」

これの意味は理解出来た。

俺は愛されてなんかない。

父と同じく、母から愛情を向けられたことなんか1度もなかった。

喉が熱くなった。

「おえっ」

胃の中のものが吐き出された。

ツンとした臭いに父が足をどかした。

「汚いんですけど」

侮蔑の眼差しを向けられた。

母だけではない。

この人からも優しい目を向けられたことなんかなかった。
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